慢性腰痛、広範囲にわたる疼痛、線維筋痛症の共通点は何か

What Is the Overlap Among Chronic Back Pain, Widespread Pain, and Fibromyalgia? 


上記のJohn McBeth博士らの新規研究で使用された、一般に採用されている定義によると、慢性の広範囲にわたる疼痛のすべての患者は軸骨格に疼痛を有していなければならない(McBeth et al.,2003を参照)。したがって、慢性腰痛、慢性頸部痛、そして慢性の広範囲にわたる疼痛の間には明白な重大な共通点がある。

近年の疫学研究によって、腰痛または頸部痛に伴って、多くの場合、その前後に他の身体部位に疼痛が認められることが明らかになっている。そしてこれらの疼痛には多くの場合、他のさまざまな身体的症状が伴う。シェークスピアによれば、“悲しみというやつは、いつもひとりではやってこない。必ず束になって押しよせてくるものだ”(Hamlet第4幕第5場)。

同じく慢性の広範囲にわたる疼痛と線維筋痛症(最も一般的には、慢性の広範囲にわたる疼痛および18ヵ所のうち11ヵ所以上に圧痛点が存在するものと定義される)の間にも、重大な共通点があるが、完全に一致するわけではない。一般集団の約5〜10%には広範囲にわたる疼痛がある。別の報告では、慢性の広範囲にわたる疼痛を有する患者の20%が線維筋痛症の基準を満たす。

疼痛と圧痛が必ずしもワンセットになっているわけではない。時には、触診で明らかな圧痛は認められず、広範囲にわたる慢性疼痛を有する患者もいる。最近の研究でも、筋・骨格系疼痛の既往のない圧痛が、一般集団において珍しくないことを示唆している(Schochat and Raspe,2003を参照)。

線維筋痛症と広範囲にわたる疼痛は、ある程度人為的な分類である。研究者らは、さまざまな形の苦痛を、より包括的に理解し研究を進めるために分類する。しかし、これらの疾患が一続きのものであることを理解することが重要である。そしてこの論文に記載されている疼痛症侯群、すなわち線維筋痛症、広範囲にわたる慢性疼痛、慢性腰痛、および慢性頸部痛はいずれも、1つの別個の疾患を表しているわけではない。それらは症状の説明にすぎない。


参考文献:

McBeth J et al., The role of workplace low-1evel mechanical trauma, posture, and environment in the onset of chronic widespread pain, Rheumatology, 2003; 42: 1-9. Schochat T and Raspe H, Elements of fibromyalgia in an open population, Rheumatology, 2003; 42:829-35. 


(加茂)

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加茂整形外科医院