無症状膝のMRIにおける異常所見の発生頻度


無症状膝のMRIから、加齢に伴う半月板の変性と変形性膝関節症との関連および円板状半月板の頻度を検討した。対象は膝に外傷の既往がなく、症状のない健常人115名であり、年齢は13−76歳であった。半月板の変性は加齢とともに増加し、内側半月板の後節部で最も著明であった。内側半月板の後節部では全体の18.3%、60歳以上では41.7%に断裂を示すgrade3を認めた。円板状半月板は15膝にみられ、すべて外側であった。円板状半月板は広い年齢層にみられ、その頻度は13%であった。年齢に伴う半月板の変性の増加は他の欧米の報告と同様であったが、軟骨下骨異常の頻度は著明に高かった。その原因として日本人の生活様式や遺伝的要素が考えられる。本研究により、健常日本人における膝関節MRIの異常出現頻度が明らかとなり、有症状の患者を治療するにあたり有用な情報となる。

 J Orthop  Sci  掲載論文要旨    日整会誌76            

福田昇司  正木國弘 高麗文晶

変形性膝関節症への関節鏡下デブリドマンはプラセボ効果しかない                Medical Tribune 2001.5.10より


〔サンフランシスコ〕 当地で開かれた米国整形外科医学会(AAOS)の年次集会で,ベイラー大学医療センター(テキサス州ヒューストン)整形外科のBruce Moseley教授は,変形性膝関節症(膝OA)の患者に関節鏡下デブリドマンや関節内洗浄を行っても,2 年後の予後はプラセボと差がないとする研究結果を発表した。

同研究では膝関節痛がある患者180例に、関節鏡下デブリドマン、関節鏡下膝関節内洗浄、器械挿入または軟骨切除をしない模擬関節鏡下小切開手術が行われた。3群に無作為に割り付けられた被験者は全員がインフォームドコンセントに署名し、同じ外科医の手術を受けた。

同意の手続きで擬似(sham)手術のみを受ける可能性があることを実際に説明した結果、研究参加基準に合致した被験者324例のうち、44%は参加を断った。研究期間中は一貫してどの手術を受けるか被験者にわからないようにした。

2年間の追跡期間で、3群全てで疼痛および膝関節機能の中等度の改善を報告したが、デブリドマン群も関節内洗浄群も、プラセボ群より成績が良いわけではなかった。追跡期間のある時期において、擬似手術を受けた患者の転帰はデブリドマン群より良好であったと報告された。

関節鏡下膝関節手術によりほとんどの患者の疼痛が軽減することが過去の臨床試験で明らかにされたが、実際の手術と擬似手術の比較はされていない。米国では、年間65万例以上の関節鏡下のデブリドマンや洗浄処置が行われているが、その多くは関節症患者で、費用は1回約5千ドルである。

「本研究は、手術方針に重要な関わりを持つ」と同博士は話す。「膨大な利益をもたらす産業を後押しする推進力が全てプラセボ効果であることが判った。医療産業は、純粋に主観症状を軽減する外科処置のプラセボと比較した有効性をテストする方法を考え直す必要がある」

付随論説において、壊死組織の関節鏡下切除が単に関節破壊のエビデンスを除去しているに過ぎず、症状に対する効果はないに等しい、とボストン大学のDavid T. Felson, MDとアイオワ大学(アイオワシティ)のJoseph Buckwalter, MDは示唆する。

加茂整形外科医院