正常人における腰椎MRIの異常所見の頻度


腰椎のMRI検査で時折見つかる“異常”所見が、どの程度の臨床的意味を持つか明らかではない。この研究では、腰痛の既往がない20〜80歳の成人98人を対象に腰椎MRIを施行し、高率に異常所見が見つかったと報告している。

腰椎MRlで全椎間板の5椎間に椎間板ヘルニアがあるかどうか、以下の所見を基に観察した。椎間板膨隆、対称性に椎間板が脊椎管内に膨れている。椎間板突出、局所的に非対称性に椎間板が膨れてる。椎間板脱出、さらに高度に椎間板が突出している。診断する放射線科医の予断を減らすため、これら98例のMRIに腰椎患者の異常所見のあるMRIを交ぜ合わせた。

その結果、98人中52%に少なくとも1椎間以上の椎間板膨隆が見られ、27%に椎間板突出が、1%に椎間板脱出が見られた。加齢と共に椎聞板膨隆の頻度は増え、椎間板突出は活発な肉体活動を行っている人に多く見られた。2椎間以上の異常所見は38%に認められた。その他の異常所見として線維輪欠損14%、椎間関節炎8%、脊椎分離、および脊椎滑りがそれぞれ7%に見られた。

N Engl J Med 1994  Jul   14;331:69-73


MRlの普及は目覚ましく、特に脊髄髄内病変の観察には今や欠くべからざる検査法となった。しかし、椎間板病変に関しては、従来よりMRIのみを過度に評価することの危険性が指摘されている。事実ここで示されたデータでは、正常人の腰椎椎間板においてもかなりの頻度で異常所見が検出されており、輿味深い。またこの報告は、腰椎椎間板ヘルニアの診断と治療に際して、神経学的評価を基盤に多面的検査手段、あるいは経時的観察が必要であることを示唆している。頸椎椎間板病変の診断治療に際しても念頭におくべきことと思われる。

東北大医学部脳神経外科・冨永悌二/吉本高志

形態学的異常を症状の原因としてみることの否定


まず、病因・病態について最も衝撃的な意識変化は、椎間板ヘルニアのような形態学的異常が必ずしも腰痛を起こすとは限らない、ということである。これについてはBoosの研究が印象深い。これは、年齢、性別、職業などを一致させた椎間板ヘルニアで自覚症状のある患者群と、まったく症状のないボランテイア群の両群間でMRI画像を比較検討した研究で、無症状ボランティア群で76%に椎間板ヘルニアが存在することを示している。つまり、椎間板ヘルニアがあっても必ずしも腰痛が起こるとは限らないわけで、症状の原因が他にあることが示峻された。では、症状の原因はどこにあるのか。Boosは、同じ研究で症状のある、患者群と無症状群の間の相違点を詳細に検討し、その結果、ヘルニアによる神経根圧迫例が、患者群に有意に多く、ヘルニアの程度も患者群で高いことなどを指摘した。さらに興味深いことに、両群間には仕事に対する姿勢(仕事上のストレス、仕事への集中度、仕事への満足度、失職など)や精神杜会学的な要素(不安、抑うつ、自制心、結婚生活など)といった心理的側面でも有意な相違が見られることもわかった。

脊椎の形態異常が必ずしも腰痛症状を伴わないことは、臨床でもしばしぱ経験される。まったく症状のない人の脊椎でも、腰椎に限らず頚推、胸椎で椎間板の後方突山を認めることはままあると菊地先生は指摘する。また、加齢とともに脊椎の変形頻度は高くなるが、腰痛の発症頻度との相関はないことが、先生の集計でも確認されている。

ingelheimer 57

80才代、女性。普段から元気で畑仕事をしている。年に1〜2度腰痛で来院する。そのたびに、簡単な治療で治癒する。下肢の症状はない。

 

 

 

加茂整形外科医院