腰痛と椎間板変性の関連に疑問


〔ニューヨーク〕 ベルン大学(スイス・ベルン)のAchim Elfering博士らは「椎間板変性を発症する原因は,重いものを持ち上げるといった職業上のリスクファクターにある」という一般的な見解に疑問を投げかける研究結果をSpine(27:125-134)に発表。腰痛の発生は椎間板変性の発症を示すものではないと報告した。Elfering博士らは,研究開始時には腰痛がなかった患者41例を対象として,MRIを用いて腰椎椎間板変性の所見を調べた。それによると,5 年間繰り返しMRIを実施した結果,41%に椎間板変性の発症または進行が認められた。同博士は「仕事や運動に関連する身体活動に注目して,椎間板変性のリスクファクターとなりうる項目を幅広く調査したところ,驚いたことに,“重いものを持ち上げる,運ぶ”,“身体をねじる,曲げる”といった従来から認められている腰痛のリスクファクターは,いずれも椎間板変性と有意な相関がなかった。さらに,実際に椎間板変性を有する患者が腰痛も有する確率は低かった」と述べた。同博士は「この研究は,従来の研究とは異なる結果となったようだ。というのは,従来の腰痛の研究のほとんどが,既に腰痛を有する患者に焦点を合わせていたのに対して,今回は研究開始時点で腰痛がなかった患者を対象として,MRIを繰り返し実施して追跡したからだ」と述べた。なお,同博士は,仕事に関連した腰痛のリスクファクターと椎間板変性のリスクファクターとは異なる可能性があることを示し,「進行性の椎間板変性と腰痛との間に関連があるとは言いきれない。椎間板変性には,遺伝や環境要因も関与することは間違いない」と述べた。 

Medical Tribune 2002.4.25.より

加茂整形外科医院