症例11 膝痛
Aさん(67歳、女性)
約5年前より、両膝痛。特に立ち座りが困難。いろんな病院へ行ってみたが、よくならない。関節鏡の検査で半月板がいたんでいるといわれた。わずかに関節に水(関節包の内側、滑膜の炎症の浸出液)がたまった状態。正座きわめて困難。左図のように強い圧痛点が多数あり。
「レントゲンでは軟骨の変性がうかがえますが、年齢相応といったところでしょう。それに半月板の損傷はあなたの年齢の方ですと、健常人でもしばしばみられることですから気にしなくていいですよ。」 このプリントをわたす。
「それよりも膝のまわりに押さえると飛び上がるほど痛いポイントがいっぱいありますね。それがあなたの膝痛の大きな原因になっていると思います。」
「痛いから動かさない、気も沈む、ますます筋肉がこわばる。この悪循環に陥っているのです。ところが医者は軟骨や半月板のことばかりに気をとられていることが多いのです。」
関節の水を抜きステロイドを注入する。圧痛点をすべてブロックしレーザーをあてる。
1週間後,「すごく楽になりました。ありがとうございます。」
「もう水はたまっていませんよ。正座の練習もどんどんして下さい。とくに風呂のなかとかでね。」
「今までなるべく正座をしないように言われていたのですが」
「正座ができないと不便でしょ。正座の練習をすることによって、膝のまわりの筋肉が柔軟になっていくと思います。正座が膝に悪いというのも根拠のない迷信のように思っています。」
「痛みがない、気もはれる、よく動く、ますます筋肉が柔軟になる、自信が付くという良循環になればしめたものです。」
圧痛点ブロックだけをする。
3週間後,水はたまっていない。「痛みはここへ来る前の何割ぐらいになりましたか?」「半分以上らくになりました。」
コメント
レントゲンの印象(軟骨の変性)と痛みは相関しません。「水を抜くとくせになる」はよく聞かれることですが、水が溜まった状態も軟骨にとって悪く、それがくせになってしまいます。私は最初の1〜2度、ステロイドを注入して炎症を止めてしまい、そのあとは周囲の筋痛を取る治療をおこないます。50肩や顎関節症も考え方は同じで(水が溜まることはないですが)、周囲の圧痛点をブロックします。