目からうろこで恐怖が消えた?  加茂整形外科入院日記       

オーストラリア在住 JM

18才のころに肩甲骨の脇の一点が痛みに襲われ、あれよあれよというまに肩こりから腰痛に広がり、高3のときは足をピクリとも動かすこともできない日がつづきました。以来、鍼やカイロ、マッサージなどで急場はしのいできたものの、数年に一回は仕事をやめなければならないほどの痛みに襲われてきました。不思議なことに一度成功した治療法は2度と効いてくれず、別の言い方をすれば、痛みを発している脳は2度と同じ手には騙されてくれず、途方にくれ落ち込むことも多々ありました。(これも心因から来る痛みの特徴だそうです)

オーストラリアに来てからもずっと疼痛はありましたが,日々の生活が脅かされるほどのひどさではなく、我慢をしてきました。しかしこの日々の我慢がかなりのストレスになっていたようで,何不自由ない生活の中でひどく落ち込んだり、何をするのも面倒くさいといった精神状態になっていきました。この1年は夜は必ずジェットコースターで下るときの感覚で目がさめ、不眠と痛みでお先真っ暗なとき、またぎっくり腰を繰り返すことになりました。あまりの痛さにCTを撮ったところ、大きく飛び出たヘルニアが石灰化して壊れて落ちており、それが神経を刺激するからこのような痛みになるといわれ、なるほどなと思わざるを得ませんでした。治す方法は手術でヘルニアを取り除くしかないということになりました。

しかし、普通の生活をしたいと願う一方、外国での手術の恐怖が大きくなり、インターネットで最新の手術法を含めた調べられる限りの情報を集めました。そこでであったのがサーノ博士の「ヒーリング.バックペイン」春秋社という本でした。このHPをご覧になっている方はたぶんTMSというキーワードからたどり着かれていると思うので、本の説明やTMSの説明は省きますが、これだけの痛みが心因であるということは、本当に驚きでした。早速TMS Japanに連絡をして、TMS理論を理解されている整形外科の先生を紹介していただきました。それが加茂先生だったのです。以下は私が加茂先生に送ったメールです。

加茂 淳先生
はじめてオーストラリアからメールさせていただきます。そちらの連絡先はつい先ごろ連絡をとったTMSの工藤さんから教えていただきました。手術を強制され、パニックになって帰国しようと休暇を申請しました。その後たまたまここ数日でTMSのことをしり、いまはせっかく帰国するなら、TMSに通じている病院に伺ってしっかりと診断を受けたいと思っています。実家は埼玉ですが、先生が以下の分を読まれて、私がそちらに伺うことに意味があると思われましたらその旨お知らせいただけると幸いです。この腰痛は18歳(高校3年の受験期)に始まってかれこれ22年の付き合いなのですが、数年に一度数ヶ月間かなりひどくなるのです。肩こりのあるときは腰は軽く、肩こりも腰痛もないときは背中の真ん中あたりがはり、そうでなければ頭痛です。椎間板のL5L4の間の遊離突出のヘルニアで、左側を下に向かって痛みが出るはずといわれながら、ここ3日(サーノ博士の本を読んでから)は右側に違和感があります。

2年程前からは、夜必ず鎖骨の5センチくらい下の胸の真ん中あたりがきゅんと言ったかんじの痛みとは程遠い感覚で目がさめます。必ず尿意とともに来るのでトイレを長く我慢して同じような感覚を味わったこともあることから、気にはしていなかったのですが、どうやらストレスと関係があるようですね。ひどかったときは日中も空気が思い切り吸えないいらだたしさがあったことが思い出されます。サーノ博士の本に出てくるTMSになりやすい人の性格はまさしく私そのものです。去年の9月にかなりひどくぎっくり腰になり、12月に帰国した折、気功整体に1ヶ月毎日かよったところ、10年ぶりくらいに何の痛みもなくなり、1月からは毎日飛ぶように気持ちよくジョギングができたのです。それが1ヶ月もしないうちにひざが少し痛くなり、その後今までにいたんだことのない尾てい骨の周りから足の後ろ側が固まるような痛みが始まり、パニックになりました。といっても、いつも痛みはマッサージや鍼に行けば3日くらいでおさまり、後はこりやはりといった感覚が残るだけなのです。朝起きたときに動けなかったときは、その日から中東に行く予定で本当に動転しましたが、鍼を打ったら2週間、カチカチになるような筋肉の痛みと戦いながらも行って来ることができました。そのときは不安だらけで40才にしてにきびだらけだったことを本を読んでいて思い出しました。

ただ、その後、3回ぎっくり腰を繰り返し、近所の医者にCTを取ってくるように言われ、椎間板に異常があったのですぐにその異物を取りのぞかなけれがいけないと、こちらの大病院に手術に送られそうになったので、入院するなら日本でと帰国を決めたのです。というか、何でこんなに軽症なのに手術なの!?という疑問と不安を母国語ではっきりさせたいというのが本音です。幸い上司が辞めないならば気のすむまで休みを上げようといってくれたので9月の17日から帰国することになりました。手術でおびえきっていたときにサーノ博士の本を偶然手にして、帰国すら今はためらっていますが(仮病のような気もして!)、ちょうど10月のセミナーに参加できるようなのでたまにはズルヤスミで羽を伸ばそうかと思っています。はじめは友人の勧めで、骨盤調整なるものを受けてみるつもりだったのですが(そのために1ヶ月の休暇を考えたのです)やはり無駄でしょうか?せっかくの休みにできるだけの事をしたいので、実家は埼玉ですが近くにTMSを理解した病院がないのならそちらまでうかがう事もまったく問題に思っていません。10月の東京のTMSのセミナーには出るつもりですが、やはりしっかりした診断も先に必要だと思えるのです。(ただ単に手術を前提にした説明ではなく!)今はぎっくり腰系の痛みはほとんどありません。背中の真ん中が懲りとはりに締め付けられているかんじです。(慣れ親しんだ感覚です。)飛行機もこの状態で乗るのに離れているので、大丈夫だと思います。せっかくの腰痛休暇?を無駄にしないよう (検査とヘルニア手術の恐怖だけにさらされないよう)アドバイスをいただけますようどうぞよろしくお願いいたします。お忙しい中、長いメールで申し訳ありません。

このメールから始まって、今私は引越しもできるほど動けるようになりました。ちょっとした家具は自分で動かしました。

1ヶ月の休みを取って、帰国してすぐに加茂整形外科に入院しました。本来なら通院で十分だと思うのですが、飛行機で通うわけにも行かず、個室を取っていただきました。着いてその日にCTを先生にお見せしたところ、切る必要は全くないし良くなりますよとこともなげに言われるので、拍子抜けしたまま入院生活が始まりました。

治療はこのHPに先生が書かれているような注射やレーザーが主でしたが、近所の温泉にも毎日入りに行きました。この他に神経症と痛みのカラクリを書いた本や記事、そしてビデオなども毎日のように貸していただきました。心の病気にだけはならない自負があって私にとって、毎日のように病室で得る新たな知識は、痛みを忘れるほど私を釘づけにしました。それとともに、どうして痛み止めではなく、抗鬱剤や精神安定剤が処方されるのかもわかりました。痛いのは腰でも、悪いのは腰ではなくて、腰に痛みを送っている脳なのです。おかげで、自律神経が刺激を受けて、微熱やかなりの寝汗に洗濯が大変でした。しかし、頭で理解したつもりでも体は恐怖でこわばっており、私は部屋でぬくぬくと注射に頼って過ごしていました。

そんな折、先生に週末に出かけてきなさいといわれたので電車で30分の金沢に向かいましたが、立てなくなる恐怖で、金沢には行ったもののお茶を濁しただけでどこも観光せずに帰ってきてしまいました。飛行機に座れて、どうして小旅行がだめなのかと思われるでしょうが、飛行機にのるときは、乗れなければ外国で手術というものすごい脅迫感があったのと、ビジネスクラスに自分の羽枕を持参という重装備です。でも、ローカル電車は90度の硬い椅子で、下手をすれば座れません。知らない土地でどこに公衆電話があるかも定かではないし、知り合いもいないのです。不安と恐怖だけをお供の金沢行きです。それから3日後、温泉で椅子を戻そうとしたときにクキッと音がして、またぎっくり腰です。歩いて帰れたものの、やっぱりこの治療もだめなんだという絶望感でいっぱいになりました。しかし、いつもなら1週間は動けないはずなのに、今回は、先生に発破をかけられて動いてみたら痛みが治まってくるのが感じられました。次の日も温泉に行って思い切って椅子を取り上げてみましたが痛いもののそれ以上の事態にはなりませんでした。週末もう一度ぎっくり腰を抱えて金沢に行きましたが、今度は大丈夫と思っただけで健康な人が驚くほど歩きまわってこられました。それからは毎日治療の合間に外出をして喫茶店で本を読むなど無謀なこともしてみなしたが、不思議と痛くなる気がしないのです。そして18日の楽しかった?入院生活を経て実家に戻り、姪っ子をつれてデパートにおもちゃを買いに行き、エコノミークラスに座ってオーストラリアに帰ってきました。今私は新しい家で、モップかけも苦にせず暮らしています。

加茂先生のHPには医学的な治療法が書かれていますが、私はこれを読まれている方に、もしTMSの疑いをもたれているのなら、いいお医者さんが近くにいてくれることがどれほど効果があるかをわかっていただきたいと思います。サーノ博士は理学療法的な治療ですらやめた方が良いといっていますが、サーノ博士の患者でない限りそのリスクを誰がケアしてくれるでしょう。頭で心因だとわかっても、本当に理解するには時間がかかります。私がそれを本当に理解し始めたのは入院中にぎっくり腰をやったときかもしれません。私たちには医学的な知識と痛みを軽くあしらわずに向き合って支えてくれる先生とそれらを得るための行動が必要だと思います。羽田から飛行機で行く病院は遠いのかもしれません。でもたったの1時間です。入院は高いですか?私は18日で10万ほどかかりましたが、保険でカバーできました。本当にいい休養ができました。
加茂先生をはじめ、看護婦さんたち、同じ痛みを抱えて入院されていたか他、本当にお世話になりました。加茂先生のところで痛みを治された○○さん、見ず知らずの私をお見舞いくださって、どんなにありがたかったかわかりません。
長い長いリゾート入院?体験談になりました。もっと長くなるといけないのでこの辺で。

加茂整形外科医院