レーザーによる椎間板手術がExcellentまたはGoodであったのは、患者のわずか31%に過ぎないという研究が発表される


非脱出性の椎間板ヘルニア患者を対象とした最新の研究において、レーザー椎間板手術(laser discectomy)は化学的髄核融解術と同等の効果をあげられなかった。レーザー椎間板手術を受けた患者のうち、excellentまたはgoodであったのはわずか31%であったのに対し、化学的髄核融解術群では53%であった。ドイツのBochumのR.Steffen医学博士らは、フィンランドのHelsinkiで行われた国際腰椎研究学会の年次総会で新しい研究について概略を説明した。

Steffen博士らは、脊柱管占拠率が1/3以下の非脱出性椎間板ヘルニア患者80例を対象としてプロスペクティプな研究を行った。患者は全て少なくとも8週間にわたり「椎間板ヘルニアの持続症状」を有していた。期間中に施行された保存療法は無効であった。

34例が4000単位のキモパパイン注入による化学的髄核融解術を受けた。36例はホルミウムレーザーによる椎間板手術を受けた。研究に関与していない医師が、3,6,12ヵ月後に診察し効果を判定した。

「MacNabの評価基準を用いた総括的な成績は、化学的髄核融解術群ではexcellentまたはgood 53%、fair(訳者注:原文はmoderate)14%、poor 33%であったのに対し、レーザー群ではexcellentまたはgood 31%、fair 25%、poor 44%でした」とSteffen博士らは報告した。レーザー椎間板手術群の患者の28%が腰痛の悪化を認めたが、化学的髄核融解術群では11%であった。

両群とも、症状の持続期間が6ヵ月未満の患者では結果が良好であった。症状持続が6ヵ月未満の化学的髄核融解術群患者の67%がexcellentまたはgoodであった。症状持続が6〜12ヵ月までの化学的髄核慰解術群患者の50%がexcellentまたはgoodであった。症状が1年以上持続していた患者の成績は不良で、化学的髄核融解術群患者では20%がexcellentまたはgoodであった。

レーザー椎間板手術はいずれの症状持続においても化学的髄核融解術より劣っていた。症状持続が6ヵ月以内のレーザー群患者の40%がexcellentまたはgoodであった。6ヵ月以上症状が持続した患者でレーザー椎間板手術の成績は著しく劣った。

40歳未満の化学的髄核融解術群患者の成績が最も優れており、82%がexcellentまたはgoodであった。40歳以上の患者は、化学的髄核融解術の効果が最も現れやすいと考えられる「ソフトな」椎間板ヘルニアを有する可能性が低いようであった。今回の研究では、これら高齢患者の30%がexcellentまたはgoodという結果であった。年齢に関しては、レーザー群患者では同じような影響を示さなかった。実際、成績は高齢者の方がやや勝っていた。

最小侵襲手術法に関する今回の研究や他の研究に、保存療法も比較に加えるべきであったという批判的な意見がある。なぜならば非脱出性の小さなヘルニアによる坐骨神経痛の自然経過が非常に良好だからである。多くの患者で保存療法の施行期間は比較的短かったが、これらの患者の中には外科的治療がなくても比較的速く回復したと思われる患者が含まれていたことが示唆されている。

将来の研究として、同様に観血的椎間板手術(open discectomy)を受ける患者群を設けると興味深いであろう。椎間板ヘルニアや坐骨神経痛を有する患者で、適応患者が適切に選択された場合に、観血的椎間板手術によって90%もexcellentまたはgoodであるという結果を得た研究がいくつか報告されている。脊椎外科医がこの患者集団においても本研究のような結果しか得られないのであれぱ、はるかに成功率の低い低侵襲性の方法を推奨することは困難であろう。

TheBackLetter,10(9):100.1995.

加茂整形外科医院