画像所見の新しい報告様式を二人の研究者が提案

現在の報告書は患者に無用の心配をさせている


X線所見の報告書(現在の書き方)にはしばしば、患者をわざわざ不安にさせるような情報が記載されていることがある。放射線科の報告書を入手できるのは昔は医師のみであった。しかし今では、患者が主治医にこれらの所見を見せてほしいと要請することがよくある。場合によってはこれが厄介なことになる。

放射線医はしばしば、患者の腰痛にはほとんど関係のない脊椎の状態に関する決まりきった所見を記入する。X線所見報告書を見た患者は、普通ならば疼痛エピソードから回復しているはずだが、自分が進行性の変性脊椎疾患(degenerative spine condition)だと思い込んでしまうことがある。

“変性変化に関する情報は、放射線医から医師へ、医師から患者へと伝達されるが、その所見が疼痛の原因であると暗示するように伝えられることが多い。患者は、自分の脊椎に以前からの構造上の問題があると聞かされたり、ひどい場合には脊椎炎と診断されることすらある”と、Martin Roland博士とMaurits van Tulder博士は指摘している。これらの不安を抱かせるような報告書が、患者を不必要な活動制限や思い込み、そして不必要な治療へと追い込むことがある(Roland and van Tulder,1998.を参照)。

彼らは、X線所見の有意性についての疫学的知見を放射線科の報告書に記載するよう改訂を提案している。特に、偽陽性所見である確率をX線報告書に記載することを考えている。例えば『進行した椎間板変性』という所見には、『この所見が認められた患者のおよそ40%には腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない』という説明を挿入することを提案している。同様に、脊椎すべり症と同定した場合には、『この所見が認められた患者のほぼ半数には腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない』という疫学的知見を入れるようにしたいとしている(表1参照)。

表1

軽微な椎間板変性 「放射線像でこの所見を有するすべての患者の半数近くには腰痛がみられないので、所見は患者の疼痛とは無関係かもしれない」
進行した椎間板変性 「この所見を有する患者のおよそ40%には腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない」
脊椎分離症 「この所見を有する患者のおよそ半数には腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない」
脊椎分離・すべり症 「この所見を有する患者のおよそ半数には腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない」
二分脊椎 「この所見を有する患者の半数近くには腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない」
移行椎 「この所見を有する患者の半数近くには腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない」
ショイエルマン病 「この所見を有する患者の40%以上には腰痛がみられないので、所見は無関係かもしれない」

症状のない椎間板異常の有病率の実証に役立つ研究を行ったScott Boden博士は、放射線医が椎間板膨隆および椎間板ヘルニアに関しても同様の疫学的知見を記載することを提案している。

Roland博士とvan Tulder博士は、新しい方法は多くの利点をもたらすだろうと考えている。彼らは、“放射線医は三っの目的のために、入手した疫学的情報を利用すべきであろう。三つの目的とは、まず、脊椎の単純X線像の報告をする際により正確で有用な情報を伝えること、次にこれらの報告を不適切に解釈することによって起こりうる害を減らすこと、最後に、報告書を見た人に教えることである”と説明している。

この方法により、医師、放射線医および患者が単純X線像の予測が限られていることを認識し、不必要な放射線検査を減らすことにもなるだろうと期待が寄せられている。MRIや他の特殊な画像検査の報告書についても同様のことが言えるであろう。

Roland M and van Tulder M,  Viewpoint: Should radiologists change the way they report plain radiography of the spine?, The Lancet, 1998; 352:229-30. 

The Back Letter 1998;13(8):87

加茂整形外科医院