症例42  テレビを見て不安になりました

Aさん(40歳代、男性)は約1ヶ月前より、起床時に腰痛がありしばらくするとおさまるということを繰り返していました。本日朝、電撃様疼痛が走りました。過去に3回ぎっくり腰の経験があります。

図のように筋硬結があり、そこに強い圧痛がありました。そこに局所麻酔を注射し、レーザー照射しましたらすぐに腰は楽になりました。

「ほっておけば治ると思っていたのですが先日、テレビの〔あるある大辞典〕という番組を見て、ヘルニアが心配になり受診しました。」

「ヘルニアが痛みの原因だというのは、誤った説です。健常者でもMRIで検査すると50%をこえる人にヘルニアがあるそうです。痛みと関係あるのはストレスなんですよ。何か思いあたることはないですか。」

「仕事で新しいことをやりはじめたのですが、たぶんそれがストレスになっているのでしょう。」


コメント

テレビの影響はすごいものです。番組を作るにあたって科学的批判にたえられるか十分に検討しなければなりません。この患者さんにプチヘルニア(番組)があるかどうか検査をしなければわかりませんが、あったとしてもなんら害をおよぼすものではありません。

圧痛点は痛覚過敏状態(スタンバイ状態)になっているのですがそれは構造的な問題のせいではなく生理機能的なトラブルのせいなのです。生理機能はストレス→交感神経緊張と関係があります。構造と関係ありません。

治療の意味は生理機能の異常を修正したということです。おそらく1回の治療で治ると思いますが、繰り返すようならばストレス対策を考慮しなければいけません。

この患者さんがMRIで検査してもしプチヘルニアがあり、適切な説明、適切な治療がされなかったら、「とらわれの悪循環」、「痛みの悪循環」に陥ったかもしれません。

ささいなことで起こった痛みが「とらわれの悪循環」「痛みの悪循環」で重大な結果を招くことがあることを治療するものは理解し、それを回避するようにしなければなりません。

加茂整形外科医院