椎間板ヘルニアに有痛性と無痛性があるのは?
Why
Do Some Disc Herniations Cause Symptoms and Others Don't?
大きさも形も同じ腰椎の椎間板ヘルニアがあるのに、坐骨神経痛に苦しむ人と、疼痛もなく生涯元気に歩き回れる人がいるのはなぜだろうか。これは、脊椎分野の大きな謎の一つであり、臨床にかなり影響する問題でもある。Sam Wiesel医師は「これは脊椎治療における、認識不足の問題の一つです」と言う。
Norbert Boos医師らのグループは最近、椎間板障害における有痛性と無痛性の違いを探ろうと試みた。対象にしたのは、椎間板手術を要するほど重症の坐骨神経痛患者30例である。また、無症状のボランティア46例も同じく研究対象とした。(Boos et al.,1997参照)
その中から、年齢、性別、椎間板レベル、およびヘルニアの程度が一致した、22の無痛性および有痛性の椎間板ヘルニアを見いだした。
報告には「有痛性の椎間板ヘルニア例は、同程度の無痛性の椎間板ヘルニア例より、リラックスしている時間が有意に短かった」とある。また、有痛性の病変では、椎間板の変性の程度が有意に高かった。
Boos医師らが以前行った研究では、神経の圧迫の程度が、椎間板ヘルニアが有痛性になるかどうかを予測する因子として最も良いという結果が得られている。今回の研究では、椎間板基質の組成、すなわち変性の程度も関与していることが示唆された。
Boos医師らによると、今回の研究では2通りの解釈が成り立っという。第1の解釈は、「この研究でいう無痛性椎間板ヘルニアとは早期の段階のものであり、それらは加齢に従い最終的には有痛性になるのかもしれない」というものである。第2の解釈は、「椎間板の特異的な(そして現時点では明らかではない)生化学的変化が原因で、形態学的に類似した椎間板ヘルニアでも有痛性のものと無痛性のものがあるのかもしれない」というものである。
参考文献:
Boos N et al., Tissue characterization of symptomatic and asymptomatic disc herniations by quantitative magnetic resonance imaging, Journal of Orthopaedic Research, 1997; 15: 141-9.
The BackLetter 1997; 12(6) : 63 I