SNRIについて


1990年代の抗うつ薬は欧米ではSSRIが主体となってきており,わが国でも近年フルボキサミン,パロキセチンなどが使用可能となった。SSRIは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective seroton inreuptake inhibitor)の略称であり,文字通りセロトニンの再吸収を阻害することにより,血中セロトニン濃度を上昇させる。うつのモノアミン仮説では,セロトニンも重要な役割を果たすことも事実だが,ノルアドレナリンも同様に重要な神経伝達物質である。したがって,モノアミンであるセロトニン,ノルアドレナリンを同時に選択的に増加させることができれば,うつの治療薬として理想的である。そのような背景からSNRIは登場した.SNRIはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin noradrenaline 
reuptake inhibitor)の略称であり,臨床的にはSSRIにくらべ初期の効果発現が早く,消化器症状が少ない,抗コリン作用や心毒性が少ないなどの特徴があるとされる。筆者は片頭痛の予防薬としてSSRIを第二選択として用いているが,慢性疼痛全般からみるとSSRIよりSNRIのほうが理論的に効果が期待できる。すでに示した疼痛抑制機構のなかで,モノアミンによる疼痛抑制機構にSNRIが有効に作用する可能性があるのである。筆者も経験は少数例ながら臨床的に効果を認めている。

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