脊柱管狭窄症の回復は面像診断上の変化と相関するか?


画像診断による脊柱管狭窄の所見が、疼痛や不自由度とほとんど相関しないことがしばしばある。画像では軽微な狭窄変化であっても激しい症状を有する患者がいる。その一方で、脊椎の神経経路が事実上消失しているのに、何も症状の現れない人もいる。

狭窄症に対して手術を受けた患者では、画像と症状の間に一貫した相関性が予測される。何と言っても、狭窄症の手術目的は圧迫された神経の除圧をすることだからである。しかし、フィンランドで最近行われた研究で、手術後のCT所見と、症状と不自由度にほとんど相関のないことが明らかになった。

「患者の臨床所見、身体的能カ、疼痛の程度と手術後のCT所見との不一致は顕著でした」とKuopio University HospitalのA.Hemo医学博士らは述べている。Hemo博士は、国際腰椎研究学会の年次総会において、この新しい研究を報告した。

Hemo博士らは、狭窄症の術後、平均3.5年が経過した193例を対象に研究を行った。苦痛を伴う症状と不自由さがみられる患者、あるいはそれらの症状がみられない患者も含まれた。男性109例(平均51.8歳)、女性84例(平均53.7歳)であった。患者の主観的な不自由度を0swestry問診票によって調査し、臨床像を理学検査と病歴、さらに歩行能カをトレッドミルテストによって調査した。

患者の手術領域のCT所見を行い、'硬膜管の最も狭い横断面の面積を算出した。その後、CT橡査を、狭窄なし、中心性狭窄、外側狭窄、中心性一外側狭窄の4つのカテゴリーのいずれかに分類した。

統計解析の結果、硬膜管の最小面積、0swestryスコア、腰痛あるいは下肢痛、歩行能力との間に全く相関を認めなかった。Hemo博士らは、「患者の臨床所見と身体的能力は、各CT群で同等でした」と報告している。

総括すると、彼らは手術後も症状が持続する患者の臨床的な判定を行うには、CT所見は十分な根拠を示さないと結論した。「腰部脊柱管狭窄患者に再手術を行うかどうかは、CT所見だけに頼って決定してはならず、他のX線検査も必要です」。画像検査は脊柱管狭窄において確認検査でしかなく、手術を行うための根拠として決して使用してはならないと指摘した研究者もいた。

本研究は、腰部脊柱管狭窄の画像診断の最良の手段に関する議論を引き起こした。英国NottinghamのRobert Mulholland 医学博士は、「CT検査は、本質的に軟部組織の分節間の障害に対する評価手段としては不適切です」と述べた。CT検査は、脊柱管狭窄の骨成分を十分に視覚化できるが、軟部組織成分にっいてはできない。「症状が持続する脊柱管狭窄患者に対し適切な検査を行いたければ、それはMRI検査です」とMulholland博士は述べた。画像診断に関する相対的な変化を知るために、CT検査を術前と術後に行っていれば、より正確な像が得られたであろうと示唆した研究者もいた。

MRI検査が脊柱管狭窄で選択されるべき画像診断法であるという見解に、誰もが同意しているわけではない。CTミエログラフィ所見は、従来から脊柱管狭窄の評価のための絶対的標準であったが、MRI検査が主要な役割を果たすようになった施設も一部にある。しかしながら、最適な画像診断法は何かということを一般的に決めることは非常に困難である。読影能力と同様、画像装置の質も施設によって大きく異なるからである。

TheBackLetter,10(9):102.1995.

加茂整形外科医院