症例57  椎間板ヘルニアで入院開始

Aさん(40歳代、男性)は昨年8月より何となく腰痛及び左下肢痛がおきる。次第に悪化したため、11月初旬にMRI検査をうけ、4/5間のヘルニアという診断。

整骨院などで治療をうけ小康状態だったが1月10日より悪化し、夜間痛も出現するようになる。硬膜外注射などをうけるも改善せず。

持続的に左下腿に痛みがあり、歩行には松葉杖を使っている。

インターネットで当院の考え方を知り2月3日入院。

体をくの字に曲げていて歩行困難。ベッド上での体の移動も痛みが強くスムーズに行えない。歩行器を使って移動するようにした。

左図のように強い圧痛点あり。圧痛点には下方に響くような放散痛があるのもあった。(投影痛)

計20ccの局所麻酔を使用して圧痛点ブロック。レーザー照射。消炎鎮痛剤投与。

2月4日、夜はぐっすり眠れた。腰、臀部は痛みなし。安静時は痛みないが歩行で下腿に響くような痛みあり。2ccの局麻を下腿の圧痛点に注射し、レーザーをあてる。昨日の痛みを100とすると今日は20とのこと。歩行器を使用。

2月5日、痛み18、とのこと。下腿の痺れ感強いも運動痛、自発痛ほぼなし。左下肢に力が入りにくい。歩行器使用。下腿の圧痛点を押すと拇指のほうに痺れ感が放散する。入浴する。下腿の数箇所、トリガーポイントブロックする。

2月6日、昨日、入院中の患者さんが「腰痛は怒りである」を貸してくれる。本日は痛み0、痺れも安静時は0、動くと下腿外側にしびれあり。力が入らないのでまだ歩行器を使用している。拇指や足の背屈力、底屈力はgood。本日はブロックなし、レーザー照射と歩行訓練。予想したよりも早く改善しているので私も驚いている。

2月7日、昨日と変わりなし、まっすぐに立つことができる。下肢のマッサージ開始。歩行器使用。

ストレスについて聞いてみましたが、思い当るものがあったそうです。このページは家で奥様が見ていらっしゃるそうです。

2月9日、今日はちょっと逆もどり、痛み40、お尻のところに圧痛点あり。押さえると下肢にひびく。

2月10日、痛みの場所が大腿前面に変わる。ここは以前に痛みを感じたところでそうだ。ブロックでとまる。しびれなし、安静時痛なし、眠れる。痛いときは下肢全体に冷感あり。ホットパックする。

2月14日、3日間ほど動作時に臀部〜大腿部にかけて痛みが放散する。安静時や起立してしまうと痛みはないが動作の途中にひっかかるような痛みあり。本日はよい。大腿部や下腿部の外側に生じる圧痛はトリガーポイント注射ですぐ消えるが、また生じる。すぐ消えるということはその部分が痛みの現場であると思う。もし関連痛や神経を刺激した痛みならばこのようなことで消えることはない。「体に力を入れると痛みが消える」ことを発見したとのこと。

2月16日、外泊より帰る。痛み50、調子よし。大腿部外側に圧痛点あり。側彎軽減、低周波が効果あり。歩行訓練。

2月18日、安静時の痛みなし。体を動かす時に生じるするどい痛みは消失。臀部〜大腿部に圧痛と運動痛あるもスーパーライザーの照射で消える。ということは筋痛(myalgia)である。

2月19日、本日は極めて良好。動作スムーズ。痛みほぼなし。側彎あるも軽度。歩行はまだ歩行器に手を添えている。

2月22日、良好な日が続いている。患肢に体重をかける練習。圧痛点は探さなければ分からないほどになる。外泊。

2月26日、就寝時、安静時は痛み、しびれなし。側彎相変わらず。うつ伏せ、仰向けになれない。今日初めて、5秒間ほど完全うつ伏せになれた。(圧痛点ブロックをしてから、浮き上がる左のお尻を押さえつけた。Aさんはイタタタ・・・ふくらはぎがしびれる。)

2月27日まっすぐ仰向け、腹ばいになれる!歩行も歩行器につかまらずできる!Aさんも私も感激。昨日私がした整体?が効いたのかな。神経根の刺激症状ではなくて筋肉のこわばりが原因だったと思う。痙性斜頚と同じか。

2月28日、外泊。

3月6日、最近は安静時、痛みがない。ブロックはほとんどしていない。歩行により下腿にしびれ感あり。次第に歩行距離をのばしている。リハビリ中。外泊。

3月9日、長い歩行で臀部に痛みがでてくるが、これも次第に改善している。今回は初めて自分で車を運転してくる。


コメント

これから始まる入院の経過をかきます。ご本人の了解を得てあります。痛みは個人差が大きく予測はできませんが、何とかよくなる予感がします。

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約1ヶ月の治療で、体幹の前屈、側屈はとれて、杖なしで歩行ができる。仰向き、腹ばいになれる。夜間痛、安静時痛なし。歩行により臀部痛あるもしだいに距離は伸びている。

治療は圧痛点のブロック注射(トリガーポイントブロック)、レーザー照射、マッサージ、ストレッチ、歩行訓練、飲み薬、読書療法(「ヒーリングバックペイン」「腰痛は怒りである」:恐怖の回避)

神経根ブロック、硬膜外ブロック(仙骨ブロック)はしていない。Aさんにとって辛い治療は一度もなかったことと思う。

疼痛性側彎も痙性斜頚と同じmyalgiaの症状、ラセーグテストも五十肩のようなmyalgiaの症状とみたほうが理にかなっていると思う。

他の症例もそうなのだがだいたい1ヶ月ほどでよくなってしまう。ヘルニアとmyalgiaの関係を研究しなくてはいけないと思う。

整形外科医が神経根にこだわって合理的な説明ができないでいる間に患者は代替医療に多く流れているのが、いろいろな掲示板でわかる。代替医療の治療は整体とか中川式ストレッチとか表現は違うかもしれないが神経根を無視したmyalgiaの治療をしているわけだ。鍼灸もmyalgiaだから効果は期待できるだろう。


Aさんから

私は今まで大病や大きな怪我もした事が無くこれが初めての入院でした。初めての入院がこんなにも長くなるとは最初は思いもしていませんでした。自分のこの病気がこんなに大変なものだとは思ってもいなかったのです。

最初に痛みを感じるようになったのは去年の8月下旬頃です。左足下肢すねが痛くなって我慢しながら生活していました。11月に入ってから我慢できない痛みになってきたため、最初地元にあるヘルニアの手術で有名な整形外科に行ったところ、すぐMRI検査され結果、腰椎椎間板ヘルニアだと診断されましたがすぐ手術が必要というレベルではないらしくとりあえず薬をもらってしばらく様子を見る事になり、二週間後また診察に行きましたが痛みは改善されていないので、一週間後一泊して造影剤を入れて検査をすると言われたのです。しかし、目の前の痛みを取ろうとはしてくれずこのままの痛みで一週間は耐えがたいと思い、行きつけの接骨院へ行って治療してもらう事にしました。幸いその後、一週間くらい通院して痛みも取れ楽になったのです。

そして年が明け1月10日ごろからまた痛みがでてきたのです。今度は速いペースで悪化していきました。また接骨院で治るだろうと高をくくっていたのですが、悪化のスピードに治療のスピードが追いつけないという感じでした。治療してもらうと確かに幾分か楽になるのですがまた痛みが出てきてという繰り返しで、とうとう松葉杖を使いなんとか歩いてるという状態になり、痛みで夜も十分眠れなくなりました。そんな状態が2週間ほど続きました。

そこで近所のペインクリニックと掲げている病院に行ってみる事にしたのです。そこでもやはりヘルニアという事で痛み止めの座薬と飲み薬をもらったのですが、痛みは全く改善されず翌日また行ったところ、神経ブロック注射しかないと言われ覚悟をめて治療台に横になりました。背骨の腰のあたりに注射されすぐは効かないけど夕方くらいには効いてくるからと言われ自宅で休んでいたんですが結局痛みは夜になっても全く改善されませんでした。

もうあの注射は打ちたくないと思い、やっと意を決して自宅から60q以上も離れた加茂整形外科へ診察に訪れたのでした。(後から思えばもっと早い時期、せめて松葉杖が必要になった頃訪れていればこんなに長期入院にならなかったかも)

入院してからは症例に書いてあるとおりで、良くなったり悪くなったりもありましたが、何かのきっかけで急に良くなる事がありました。最初に「腰痛は怒りである」などの本を借り読ませてもらったのが精神的にすごく強くなって良かったですね。入院した頃は痛いから動かないでおこうと考えがちでしたから、あの本を読んでいなかったら寝たきり状態になってますます悪くなっていたでしょう。本当に自分にとって辛い治療は一切無かったのですが、歩けない事自体がすごく辛い事でした。多少痛い目にあってもいいから早く歩けるようになりたいと思っても最後は自分のがんばりしだいというのがまた辛かったです。

退院した直後は足にまだ少し痺れが残り、時々筋肉痛のような痛みも少し有り湿布を貼れば収まるという日が続きましたが、今は痛みもほとんど出なくなっています。

今は仕事にも復帰できていますが、去年の2月に仕事内容が変わった事もストレスになっていたかと思います。わりと立ちっぱなしで仕事してるのも原因かもしれないと思い、なるべくストレス貯めないように体にもあまり負担掛けないように注意しています。

加茂整形外科医院