むち打ち症のレビュー:患者向けの情報とアドバイス


先頃BackLetterにGordon Waddell博士らによる、むち打ち症患者のための革新的な教育用パンフレットであるThe Whiplash Backに関する記事が掲載された(Waddell.2001およBackLetter,2001を参照)。複数の読者から、このパンフレットの元になったエビデンスのレビューについて問い合わせがあった。

そのレビューはEmergency Medical Journalに掲載され、同誌のwebsiteでも公表されている。

手短に言うとTim McClune博士らは、患者への情執提供に役立つと思われる臨床・非臨床のむち打ち症関連テーマについて、体系的な文献検索を行った。検索した163編の論文について、質、一貫性、および意義をランク付けした(McClune et al.,2002を参照)。

著者らは、むち打ち症関連のテーマに関するエビデンスの多くは、通常の体系的レビューで用いられる方法論の基準を満たしていないと指摘している。その結果、著者らは患者向けの重要なメッセージを確認するために、“最も良いエビデンスを総合する"ことを選択した。

“むち打ち症の文献は、分野によっては良好な科学的エビデンスが明らかに不足しているが、一方で、患者教育に最も関係が深い多くの分野については、高度の一貫性とコンセンサスがある"と著者らは述べている。しかし、特定の治療方法に関する質の高い無作為対照比較研究の、差し迫った必要性があることには変わりはない。

新規のレビューは、疫学、臨床評価、診断検査、むち打ち症の概念モデル、治療、教育、および社会政策に関する情報を提供してくれる。レビューの中心的な結論をいくつか下表に要約する。

参考文献:

BackLetter, Whiplash resource, 2001;16(12):133-9. 
McClune T et al., Whiplash associated disorders: A review of the literature to guide patient information and advice, 
Emergency Medicine Journal, 2002; 19:499-506; www.emjonl ine.com. 
Waddell G et al., The Whiplash Book. London. The Stationery Office Ltd., 2001.

The BackLetter18(4):41,2003. 

患者向けの情報とアドバイスの指針となる鞭打ち症のレビュー:主要メッセージ

エビデンスの質

診断および予後

患者向けメッセージ

科学的エビデンスの範囲は広がり、質は向上した。 大多数の患者の損傷の正確なメカニズムは依然としてはっきりしない。 むち打ち事故で重篤な身体的損傷が生じることはまれである。
むち打ち症の多くの分野のエビデンスは、体系的レビューで通常用いられる方法論の基準を満たしていない。 積極的な管理法を用いても少数の患者では慢性化し、臨床的に難しい問題が残る。 おおむね予後が良好である点について、患者を安心させることが重要である。通常の活動を早期に再開することによって回復が早まる。
入手できる証拠は、早期に積極的管理法を行うという考え方を支持する。 3ヵ月後に症状が持続している患者は、2年後以降も症状を有するリスクが高い。 安静、頸部カラーおよび悲観的なとらえ方や考え方は、回復を遅らせ、慢性的な問題の発生原因になる可能性がある。
より質の高い情報、特にさまざまな治療および管理方法の有効性を検討できる、無作為研究が必要である。 心理的因子や文化的因子が慢性疾患への進行に影響するように思われる。 むち打ち症の過剰な医療対象化は、回復に悪影響を与える。運動、徒手治療および積極的なとらえ方や考え方が、活動レベルを上げるのに役立つ可能性がある。

加茂整形外科医院