精神科領域から見た線維筋痛症の病態

伊野美幸,竹之下由香,新妻加奈子,伊藤幸恵,岩倉拓,青葉安里
聖マリアンナ医科大学神経精神科


代表的な精神科の診断分類であるDSM-Wにおいて器質的・機能的に原因不明の慢性疼痛が含まれ,症候的に線維筋痛症fibromyalgia(FM)との共通点が多く,その関連が示唆される疾患は身体表現性障害,特にその下位分類である疼痛性障害であろう.疼痛性障害は,疼痛の発症・重症度・悪化・持続に心理的要因が重要な役割を果たし,かつ重篤な疼痛が臨床像の中心を占め,疼痛のために杜会的・職業的な機能の障害が生じるものである。

疼痛が患者の生活の主要な関心事で,医療機関を頻繁に利用し,かなりの薬物を使用している。慢性例では抑うつ性障害を合併していることが多く,しばしば自殺の危険が高まる。心理的要因が単独で発症することは少なく,多くは心理的要因と一般身体疾患罹患の両方が発症に重要な役割を果たしている。どの年齢層にも発症し,顕著な性差はなく,経過や予後は様々である。

病前性格はアレキシシミalexithymia(失感情症)が多いと言われている。治療的態度は共感を基本とし,薬物療法の第1選択は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),三環系抗うつ薬などのセロトニン作動系を中心とした薬物であり,鎮痛薬は有効ではない。

一方,FMではうつ病・パニック障害・身体表現性障害の併存率や生涯有病率が高いことが多く報告され,FMのうつ病併存率は有痛性の関節リウマチよりも高いこと,FMでは家族歴にうつ病が多いことも報告されている。

FMに対する抗うつ薬の有効性の報告では,うつ症状の改善とFMの症状の改善の間に相関を認めないとする報告もある。またFMでは身体表現性障害と同等に幼少時の虐待などの不幸な出来事が多いことも報告されている。このように疼痛性障害はFMとの共通点が多いものの,相違点としてFMの疼痛は心理的要因との関連が明確ではないこと,FMでは圧倒的に女性に多いことや特有の圧痛点があることなどが挙げられる。当日は,FMについての精神科領域の報告を概観し,FMにおける精神科領域の関わる病態について考察する。

加茂整形外科医院