手根管症候群の治療は不用


長い間、われわれには本疾患の無治療の集団とそれらについての経験的な証拠資料がなかった。それ故に、本研究は非常に有用である」と、WebMDの要請を受けて本研究を再検討したAndrew Lincoln ScDは語る。「臨床的な改善があると、研究者らは専らそれは治療の結果によるものと考える傾向がある。しかし、われわれは自然な自発的治癒を支持するデータを手に入れることができた。」

Lincoln博士は、ジョンホプキンス大学Bloomberg公衆衛生学部(メリーランド州ボルチモア)損傷研究対策センターの研究助教授である。イタリアのさまざまな診療所の研究者らが、臨床的にCTSと診断され治療を受けていない患者196例(274手)について、最高15ヶ月間にわたり経過観察を行った。患者は、症状および機能に関する主観的問診表に記入し、臨床的検査および電気診断法による神経検査を受けた。非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を時折使用する以外に、強力な薬剤を服用した患者はいなかった。

経過観察時に、ほとんどの患者は疼痛、機能範囲、症状または客観的データにおいて変化が認められなかった。一方、改善もしくは悪化した患者については、ひとつのカテゴリーを除いたあらゆるカテゴリーで、悪化した患者よりも改善した患者のほうが多かった。それまでの症状持続時間が短かった患者は、自然改善率が高かった。同様に、若年患者は高年患者よりも経過が良好な傾向がみられた。

「より重度の症状のみられた患者の方が自然に改善する傾向が強かったのは、本当に意外だった。」と     Richard K.Olney MD はWebMD に語っている。「一般的概念に従うならば、重症のCTSに対しては、より積極的な治療を行いたいであろう。もちろんこの結果から、われわれ全員がこの問題についてより慎重に考えなければならない。」と、Olney博士は本研究の付随論説で述べている。同博士はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の臨床神経内科教授である。

しかしLincoln博士はこの知見にそれほど驚かなかった。「それは、ある程度は時間が経過することにより疾患が自然に進行および消失したということなのだろう」と同博士は語る。「かなり軽度の症状から始まる患者は、より重症の段階へと進むようだ。そして重症の段階にあった患者は、実証されたように、外科手術による治療を行わなくても、最終的には改善傾向に向かうということであろう」

「これは、実際には保存的療法を支持している」とLincoln博士は話す。特に神経学的所見が一定しない場合や見当たらない場合、また患者が手術を先延ばしできる余裕があるときには、保存的療法が支持されるという。Lincoln博士は、最近では、外科手術的治療、人間工学的な工夫、職場での社会的介入および個々の心理・社会的介入を含めた、「多元的な」治療法が行われていると補足する。しかし、他の人々は保存的療法についてそれほど確信をもっていない。

「改善しそうな患者を予測する方法はあるのだろうか?」と、New York Weill Cornell医療センター神経筋部門の責任者、Michael Rubin MDは自問する。「仮にあなたが私のところに診察を受けにきて、次の患者よりも重症だとしたら、私は、”いいですか、あなたは自然に良くなりますから、治療はしませんよ”と言ったりしない。あなたが重症なら、それに見合った治療をする」。

Rubin博士は、本研究には関与していない。Lincoln博士は、なぜ一部の患者は自然に改善するのかを知りたいという。「最初に診断された後、患者の68%は手にかかる負荷を減らしており、32%は仕事または趣味の活動を変えていた」と同博士は語る。「どのような種類の人間工学的工夫や手を使うことの減少が、自然的改善に関連していたのかを明らかにするのは興味深い」「まだ最終的な結果が出たわけではない」と   Olney博士も同意する。同博士は、CTS患者に何が最も有効かは不明だが、明確な治療計画の立案が重要だと話す。「進歩しつつあると思うが、米国民に対する最終勧告を行えるようになるには、まだ課題が多い」と、Olney博士は語る。

2001.6.Web Med


(加茂)

日本の医師は手根管症候群→正中神経障害→しびれ→ビタミンB12(メチコバール)という連想をする。上記にはしびれという言葉がでてこなく「疼痛」、「消炎鎮痛剤」という言葉がでてくる。先入観はこわいものだ。

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