症例65  不思議な症状(身体表現性障害)


Aさん(50歳代、女性)は2年ほど前から頚〜右肩に痛みがあり、右前腕がしびれています。仰向くと痛みが走ります。整骨院にかかっていましたがよくならず某病院整形外科でみてもらい「頚からきている症状」ということで牽引などをしましたが一向に改善しませんでした。

図のような圧痛点がありました。圧痛点のブロック注射をしましたら少し楽になったといって帰られました。投薬なし。

次の日、背中の方は楽になったが手のしびれがひどくなり4,5指に力が入らないということでした。この時点で私は身体表現性障害の中の転換性障害だろうと思いましたが確定できるわけでもなく説明も困難なので「心配いらないのでしばらく様子を見よう」といいました。本人は牽引とマッサージを希望しましたのでそうすることにしました。以前からの痛みやしびれは心身症だと思いますが。

数日後、右手に力が入らない、字が書きにくい(握力10kg、左19kg)。実際に字を書いてもらいましたが特に問題はなさそうです。

「脳から来ているのでは・・・脳のMRIを撮ってみたらという人がいるんです。」「脳や頚からの症状とは思えません。何かストレスに感じていることはないでしょうか?」「いいえ何もありません。」「そうですか。よく眠れますか?」「3回ほど目が開きます。」「私はストレスと関係していると思います。自分で気が付かないことも多いものです。以前に何か似たような症状になったことはありませんか?」「9年ほど前に足がしびれて歩けなくなったことがありました。病院で診てもらったら腰からきているということでした。」「何日ぐらいで治りましたか?」「2W位で治りました。這ってトイレにいったりしていました。」

・・・・・「盆踊りに出たくなかったのです。そういえば盆踊りが終わったら治っていました。」「今度のこともきっとそのようなことだろうと思います。」「今度、町内の溝掃除があります。主人はそのとき旅行にいっていないんです。」「そのせいかもしれませんよ(^_^.)」「子供の結婚式もあるんです。」「どちらかのせいでしょう。(^^)」


コメント

このような症状は証拠がありませんので消去法で推理していくしかありません。長年の経験で表情などからピンとくるものです。それにしても説明は難しいものです。気をつけなくてはいけないのは医療行為のせいでそうなったと思われることです。

以前のことですが、「今、何の薬を飲んでいますか?」「脳梗塞の薬です。」「いつ脳梗塞になったのですか。今は全く後遺症はみられませんね。」「台所で急に両下肢に力が入らなくなって救急車で病院にいったのです。そしたら脳梗塞だったのです。」「???両足に力が入らなくなったのでしょ?意識は?」「そうです。立てなくなったのです。意識はありました。」「それで脳梗塞ですか?」「MRIを見せてもらったのですがたしかに・・・・」「どれくらいで治ったのですか?」「しばらくで治りました」

この例もおそらく転換性障害だろうと思います。脳梗塞で両下肢に同時に症状でしばらくで改善するなんておかしな話ですよね。(これ脳外科医)

考えてみると毎日程度の差こそあれ「原因不明の身体症状」ばかりを診ているわけですね。50肩、坐骨神経痛、変形性膝関節症、頸肩腕症候群・・・みなもっともらしい原因を述べていますが不思議ですね。

加茂整形外科医院