脊椎分離症や脊椎辷り症の自然経過(45年の追跡調査の評価)

Beutler WJ,Fredrickson BE,Murtland A, et al :Spine 28 : 1027-1035,2003


背景:

脊椎分離症やすべり症の自然経過に関するこれまでの報告は,痛みなどの症状を有する症例に限ったもので,かつretrospectiveなものである。今回の報告では,症状の有無に関係なく,小児期から青年期に腰椎の椎間関節突起間部の欠損が認められた症例に関して,45年間にわたるprospectiveな追跡調査を行い,その結果から予後の予測因子に関して考察を加えた。

対象:

北Pemsylvaniaのある町の1954-1957年に6歳の年齢に達した子供たち500人を対象とした。

方法:

腰椎のX線撮影を6歳の時より開始し,25歳時以降は1988年と1999年に追跡調査が行われた。1988年には腰椎に対するアンケート調査,1999年にはMRIによる検査も加えられた。

結果:

6歳の時点では,22人(4.4%)に腰椎の椎間関節突起間部の欠損が認められた.12〜25歳の間に,新たに8人に欠損が発見され計30人となった。
一側性の欠損は8人で,うち3人が欠損が治癒消失し,またすべり症に移行した症例は1例もなかった。
両側性の欠損は22人で,自然治癒は全くみられなかった。しかし,4人では全経過を通じてすべりは全く出現しなかった。すべりの進行の程度は緩徐であり,10年単位で平均7%,4%,4%,2%と次第に年齢とともに低下した。最終的に40%を超えるすべりは認められなかった。逆に痛みの体験は,最初の20年ではほとんどみられなかったが,加齢に従い増加した。すべりの進行と腰痛との相関はみられなかった。両側性に欠損のみられた例では,痛みを伴ってすべりが進行する確率は5%であった。1999年のMRIの検査では,L./S1の椎間板の変性の程度と痛みとの相関はみられなかったが,変性とすべりの大きさとの間には相関がみられた。

結語:

すべりの発現や進行の予測因子として,椎間関節突起間部欠損が一側性か両側性かが,大きく関与していることがわかった。他には予測因子とはなりうるようなものはなかった。今後,小児期のMRIの所見が将来のすべりの予測因子となりうるかもしれない。


小林芳幸(NTT東日本伊豆病院)
Pain Clinic Vol.25 No.7(2004.7)

加茂整形外科医院