あるがままに生きる

森田療法の心の処方箋     大原健士郎 著


次々と痛みに悩まされー会杜員・男・三十七歳ー

私が症状にとらわれるようになったのは、十五年前からです。旅行中、左足底部に痛みを感じ、その後次第に症状が進み、東京の主な病院の整形外科、神経内科、ペインクリニック、スポーツ外来などを受診、通院しましたが、症状をくい止めることはできず、日常生活も苦しくなる一方でした。足には何ら器質的な異常は認められないことを医師から言われ、自分でも心の病気であることを自覚しました。
しかし、ついに会社を休職するに至り、自分でも自立できる仕事を探してみようと、本を読みはじめました。ところが、その後激しい眼痛が出現したのです。眼科を受診しましたが、とくに異常はなく心因性の眼痛という診断を受けました。足底部の痛みを克服しようと、自分で考案した起立訓練を行なってみましたが、かえって腰痛に悩まされることになってしまいました。


その後、心身医療科に四ヵ月入院しましたが効果なく、最後に活路を見いだそうと森田療法を希望して、浜松医科大学精神神経科に入院しました。絶対臥褥期は比較的スムーズに経過しましたが、重作業期に入ると、肉体的苦痛と精神的疲労で極限状態になり、このまま倒れて死ぬのではないかといく度も考えるほどでした。

森田のスケジュールをこなすのが精いっぱいでしたが、主治医に勧められるとおり、先のことを気にせず、気分本位にならず、その日の行動を乗り切ることに専念しました。

このように痛みに耐え、行動本位の生活をしているうちに、強い痛みが襲ってこなくなっている自分を発見することができ、それが自信につながり、スケジュール以外にも体を動かしたいという欲求も生じてきました。

現在は森田グループのリーダーとして、患者さんの相談相手としての生活も務めさせていただいております。症状は続いていますが、それはあるがままに受け入れ、平和共存をしていくつもりです。退院後も森田的な態度を崩さず、一日も早く社会復帰を目ざしていきたいと頑張る決意でおります。

人が痛みに耐えるとき

痛みのメカニズムは複雑

さあ治せ、では治らない

加茂整形外科医院