身体痛がうつ病のシグナルとなる可能性

提供:WebMD

原因不明の身体の不調がある人にはカウンセリングが薬剤よりも有効かもしれない

Sid Kirchheimer
WebMD Medical News

Reviewed by Brunilda Nazario, MD


【7月20日】うつ病を抱える多くの人がうつ病であることを発見されておらず、その一方で診断がなされた人のおよそ半数は有効性が証明済みの薬剤によっても改善がみられない理由は解明されていない。新しい研究では、その理由がうつ病の初期症状にある可能性が示されている。
うつ病は、疲労、嗜眠、睡眠不足といった明らかで典型的な症状によって診断される気分障害である。しかし、うつ病は身体痛や明らかな原因のない疼痛(原因不明の胸部痛、筋肉痛、震え、ほてり等)として発症することもある

「胃痛があり、潰瘍があるなら、潰瘍が胃痛の理由である。しかし、明らかな理由がないのに身体が不調になることがよくあり、これはうつ病が原因である可能性が高い」と研究者であるコロラド大学健康科学センターのRobert D. Keeley, MDは述べる。「さらにうつ病についての特異的なスクリーニングをしない限り、医師、特に家庭医がうつ病を診断することは難しい」。

Keeley 博士は、最終的にうつ病と診断された患者200例についての調査の結果、医師はしばしば誤った初期診断を下し、それどころかそのあいまいな身体症状をうつ病以外の理由によると判断していると『Journal of General Internal Medicine』に報告している。このため治療を必要とする人に治療が提供されなかった。

薬剤は万能ではない

しかし、うつ病と診断されたとしても、これらの身体症状がある患者は自分がうつ病であると考えないため、最もよく処方される治療法(すなわち抗うつ薬)の使用を拒絶することが多いとKeeley博士の調査の結果わかった。

実際、精神的症状に基づいてうつ病と診断された人は、身体症状に基づいて抗うつ薬を処方された人に比べ、処方された抗うつ薬の6カ月間の継続率が4倍高かった。

多くのうつ病患者がしばしば服薬開始後数週間以内に服薬を止めるということは専門家の間で長い間知られていた事実であり、今回の結果がその理由を説明するかもしれない。また、この知見はうつ病患者の大多数が治療に不満を持っているという『American Journal of Managed Care』2003年2月号に掲載された研究も裏付ける。

同誌に掲載された研究では、うつ病患者のおよそ10人中8人に抗うつ薬の処方せんが発行され、ほぼ全員が処方を受けたことを研究者らは確認した。しかし、3ヶ月以内に多くの人が服薬を止めた。うつ病再発の最善の予防には、6−9ヶ月、場合によってはこれよりも長期間の治療が必要であると多くの専門家は述べる。

「1990年代以降、治療方法が患者の好みにマッチするときに、うつ病患者の状態が改善することがわかってきた」とKeeley博士はWebMDに語る。「例えば、原因不明の身体症状のある患者は抗うつ薬の処方とは対照的なカウンセリングアプローチを好むとみられる」

身体の不調は一般的

一方、『British Journal of Psychiatry』6月号で、オランダの研究者は、オランダの一般開業医の診察を受けたうつ病患者の6人中少なくとも1人は、身体症状を説明しうるような体の病気、診断名がないと報告している。

Keeley博士の研究の要点は、「医師がたとえ言及しなくても、原因不明の身体の問題はうつ病の可能性があると考えるべきだ」とKeeley博士はWebMDに語る。

「これら原因不明の症状の数が増えるにつれて、うつ病である可能性も高まる。なかなか原因を特定できない(例えば、背部痛があるが、背部に損傷がなかった)症状が4-5あれば、うつ病である可能性がかなり高い。医師が言及しなかったとしてもうつ病の可能性を患者自ら医師に伝えるべきだ」。

一般的に抗うつ薬が推奨される治療であるが、他の選択肢としてカウンセリングもある。

精神的症状のある患者は薬剤で非常によくなることが多い。「しかし、原因不明の身体的症状があり、抗うつ薬をメインとした治療を受けている場合、十分な効果はそれほどないようだ」。


参考文献

S: Keeley, R. Journal of General Internal Medicine, June 2004; vol 19, pp 615-623. De Waal, M, British Journal of Psychiatry, June 2004; vol 184; pp 470-476. Solberg, L, American Journal of Managed Care, February 2003; vol 19; 131-140. Robert D. Keeley, MD, clinical professor, family medicine, University of Colorado Health Sciences Center, Aurora, Colo.

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