”Working Backs Scotland”腰痛に関する従来の考え方を覆した例

"Working Back Scotland" an Example of Traditional Thinking About Back Pain -Turned on Its Ear


”Working Backs Scotland”公衆衛生キャンペーンは、その前に行われたオーストラリアのビクトリア州のキャンペーンと同様、いわゆる“腰痛革命”の産物である。すなわち、ここ20年間にわたる研究から発展した、腰痛に関する最新の知識に基づいたものである。

この新しいモデルは、何が病気であり何が治療であるかを定義し直すことによって、従来の考え方を覆した。これは、矛盾しているように思われるが、そうではない。従来の“整形外科の損傷モデル”では、腰痛は、休息を要する“損傷”とみなされた。患者はしばしば、通常の活動を制限し損傷が治るまで仕事を休むようアドバイスされた。

活動と仕事は多くの点で、この従来の考え方では“病因”とみなされた。治療手順では、これらの病理学的影響の除去または軽減に力が注がれた。職場における対策では主として、損傷の“原因”になったと考えられた身体的暴露の除去が優先された。

英国の健康安全委員会(Health and Safety Commission;HSC)の最近の報告書に書かれているように、現代の研究者らは、このパラダイムに異議を申し立てた。“彼らは、身体的リスクファクターの軽減にもかかわらず腰痛の発現率は低下しなかったと主張し、このことは慢性腰痛の真の病因'が、疼痛に関する誤った認識、恐怖回避行動および身体を動かさないことであることを示唆すると主張した”と、報告書では説明している。

“したがって、我々が病欠およびその関連コストを減らそうとするなら、我々は、これらの不適切な認識と反応に取り組み、公衆衛生メッセージと急性症例の有効な治療に注力しなければならない”と、著者であるHSCのElizabeth Gyngell博士は述べている。

腰痛に関する現代的な考え方においては、通常の活動と仕事は病因ではなく、むしろ治療効果があるとみなされる。このテーマはWorking Backs Scotlandキャンペーン全体に浸透している。Working Backs Scotland websiteに、腰痛患者に対するいくつかのアドバイスが掲載されている:

・活動的な状態を維持し、できる限り普通通りに続けることが重要である。
・仕事を続けること、またはいくらか腰痛が残っていてもできる限り早く仕事を再開するよう努めること。
・仕事を休んでいる期間が長くなるほど、慢性腰痛および活動障害を発現しやすくなる。

家庭医および治療専門家向けのアドバイスでもこのテーマを繰り返している。家庭医向けのアドバイスの章には次のように書かれている:

・活動的な状態を維持してできる限り普通通りに続けるよう、アドバイスすること。
・可能であれば仕事を続けるか、または数日または数週間以内に仕事を再開するよう、患者に奨励すること。完全に痛みがなくなるまで待つ必要はない。

雇用者向けの章には次のようなアドバイスがある:

・腰痛患者が仕事を続けることを手助けすること。必要ならばできる仕事を一時的に組み合わせることを考慮すること。
・病欠が発生した場合には、連絡を取り合い、腰痛のある労働者ができるだけ早く仕事を再開するのを手助けする方法について話し合うこと。

この活動促進、就労促進メッセージは、腰痛の管理に関する従来のアドバイスの完全な逆転である。これを腰痛革命と呼んでも誇張ではない。

The BackLetter No.38.October2004

加茂整形外科医院