疼痛におけるブラジキニンの役割とその抑制意義がより明らかに

第11回国際ペインクリニック学会 パネルディスカッション15「ブラジキニン」

愛知医科大学痛み学講座教授 熊澤孝朗


1957年にArmstrongらは、ヒトの炎症性浸出液や血漿中に強力な発痛物質が存在することを報告し、後にこれがブラジキニンであることが明らかになった。以来、疼痛におけるブラジキニンの役割は大きな研究テーマとなっている。

われわれも1970年代から、ブラジキニンが機械的刺激、化学的刺激、そして熱刺激に反応するポリモーダル受容器の活性化を引き起こすことを明らかにし、ブラジキニンによって熱刺激に対する反応が増強されることを報告した。この放電誘発と熱刺激反応の増強は、B2受容体阻害薬の共存下で完全にブロックされたことから、ブラジキニンはB2受容体を介して末梢性発痛物質として中心的な役割を果たしていることが示唆された。

したがって,ブラジキニンのシグナル伝達経路を選択的に遮断するような薬剤の開発が期待され、ザルトプロフェンはその有力な侯補と言えよう。さらに最近では、慢性痛におけるB1受容体の関与が注目されている。

病態痛モデルラットにおいてB1受容体拮抗薬の抗侵害作用が報告され、さらに、B1受容体を介する痛覚反応はB2受容体を介する反応よりも持続性でタキフィラキシーを生じにくいことが明らかになった。これらのことから、慢性痛の病態生理にはB1受容体が重要な役割を果たし、B2およびB1受容体を抑制することにより、痛み全体を総合的にコントロールできる可能性も期待される。

本日は、これらの点を中心に、5名のパネリストにご講演いただき会場の先生方を含め活発な討議をしていただきたいと考える。

加茂整形外科医院