賢い患者の七大戦略

「癒す心、治る力」  アンドルー・ワイル  角川書店


1.否定的見解を認めない

治癒に成功した患者たちも、そのほとんどは医療関係者から、とくに医師からの「見込みがない」「手のほどこしようがない」「治る可能性はない」などといった、希望を失わせるようなことばを聞かされている。しかし、彼らは聞く耳をもたなかった。・・・・

2.積極的に助けをもとめる

自発的治癒に成功した患者は見込みのありそうな治療法を探し、ちょっとしたことでも問題解決の糸口をつかもうとした。質問し、本や新聞雑誌の記事を読み、図書館に行き、著者に手紙を書き、友人や隣人に助一言をもとめ、可能性がありそうな治療家をたずねてはるばる旅行をした。そのようた行動をとる患者にたいして「面倒な」「ひねくれた」「いやな」患者というレッテルを貼る医師もいるが、医師の指示に唯々諾々と従う素直な患者よりも「面倒な」患者のほうが治りがいいと考える理由はたしかに存在するのだ。・・・・

3.治った人を探しだす

医療のペシミズムを消し去る最良の方法のひとつは、かつて自分と同じ病気に悩み、いまは治って元気である人を探しだすことである。むずかしい病気から立ち直った人に会うたびに、わたしは「もし同じ病気で悩んでいる人を紹介したら、アドバィスとガィドをしてくれますか」とたずねることにしている。

たとえば、30代末で15年間も慢性関節リウマチを患っている男性がいた。何年間も抑圧的なくすりをのみつづげ、片手の変形が悪化して数度の手術も行なっていた。あるときから、彼は病状の変化が自分の感情の変化と関係していることに気づきはじめた。そして、自分で健康的なライフスタイルに変える努力をし、気分を安定させるようにこころがげた。

その結果、関節炎の進行がとまり、くすりをのまなくてもすむようにたった。その後、わたしは彼のもとに何人かの慢性関節リウマチの患者を送っている。送ったのは、現代医学の治療法しか知らず、自分の健康は自分で責任をもつということを信じる理由をもたない、若い患者たちである。彼はくすりにたよらなくても病状を変えることはできると患者たちに説得し、彼らを治癒への道に導いてくれている。

4.医師との建設的な関係をつくる

治癒に成功した患者は、医療の専門家と同盟を結ぶことが多い。真剣に答えをもとめる患者の努力を支持するような専門家を味方につけるのだ。その同盟はたんに「あなたがどんなことをしているのかは知らないが、とにかくそれをつづけたまえ!」という医師との関係もあれば、「こんなことをやってみたらどうだろうか」と積極的に提案する代替療法の治療家との関係もある。必要たのは、患者の自発的治癒力を信じる専門家、答えをもとめる患者を励まし、患者に孤独ではないと感じさせることのできる専門家である。すぐれた医師は「知らない」と告白することを恥とせず、どんな方法によってであれ、患者が治るのをみることを最大の喜びとするものなのだ。

5.人生の大転換を恐れない

わたしが知っている治癒に成功した患者の多くは、その病気になった当時の当人とは別人のように変わっている。治癒を探る過程で、生きかたを大きく変える必要があることに気づいた人たちなのだ。変えたのは人間関係・仕事・住む場所・食べる食事・身につける習慣など、さまざまである。あとでふり返ってみれば、その変化は人間としての成長に必要たステップだったことがわかるが、それはかっして楽な作業だったわけではたい。変化はつねにむずかしいものであり、大きな変化は大きな苦痛をともなう。病気はしばしばわれわれを、解決したいと望みつつ無視してきた人生上の問題や葛藤にやむをえず直面させる。それらを無視しつづけることは自発的治癒が起こる可能性を封じこめることにつながりがちであり、思い切って変化への道を歩きだすことは治癒への力強い予兆だといってもいいだろう。

6.病気を貴重な贈り物とみなす

病気は変化への強力な刺激剤であり、ある人たちにとっては、もっとも奥深くに隠れていた葛藤を解決する唯一の機会でもある。治癒に成功した患者は自分の病気を、それなしには人間として成長することができなかったはずの、最大の機会つまり天からの贈り物だと考えるようになる。病気を不運だと考えたり不当だと考えることは治癒系の妨げになる。病気を成長のための贈り物だとみたせるようになったとき、治癒系のブロックがはずれ、治癒がはじまるのだ。

7.自已受容の精神を養う

どんな人にもある欠点、限界、至らたさのすべてをふくめて、自已を受容することは、より高次の意思に身をまかせることを意味する。変化は、宇宙との対決状態のときよりも、この屈服状態のときに起こりやすい。病気のときに自已を明けわたすということは、回復への希望を捨て、あきらめることではない。むしろ、病気をふくめた自分の人生の情況のすべてをそのまま受けいれ、その情況を乗りこえていくことなのだ。悲嘆のプロセスの段階(122ぺージ)を思いだしていただきたい。喪失を受容してはじめて、悲嘆の完了と治癒の達成が可能になる。また、自発的治癒を経験したある男性のことばを思いだしていただきたい。「そのコツは、自我を捨て、あたまで考えることをやめて、からだが自然に治っていくのにまかせることなんだ。からだは治しかたを、ちゃんと知っている」

加茂整形外科医院