The BackLetter No.8. Feburary 1997
Volvo賞を獲得したMats Gronblad医師らの研究は、椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の炎症関与に関する有力な仮説に異議を唱えた(1996年、Spine掲載予定)。従来の研究では、ヘルニアを起こした椎間板組織には、健常組織に比べてホスホリパーゼA2(PLA2)がはるかに多く存在しており、このPLA2が坐骨神経痛に関連した炎症反応に重要な役割を果たしていると推定されていた。
今回、驚くべきことに、Gronblad医師らはヘルニアを起こした椎間板と対照とした正常椎間板のPLA2値が等しいことを見出したのである。さらに関連する炎症細胞も比較的少数しか認められなかった。では、これまでの研究は椎間板ヘルニアの炎症関与に対して性急に結論を出してしまっていたのだろうか?あるいは、今回の研究が炎症の急性反応がおさまった後の椎間板ヘルニアを調べているだけなのだろうか?
Rydevik医師は、「PLA2の役割が完全に分かったわけではありません。今回の研究は、椎間板ヘルニアと神経根痛の発生の問題が非常に複雑であり、1つの物質だけに焦点を合わせるべき
でないことを示しています。PLA2は常に複雑なカスケードの中で活性化された物質の1つなのです(1996年、Spine掲載予定)」。
(加茂)
ヘルニアによる神経根炎が「いわゆる根性痛」を発生させるというのは未だに仮説なのです。生理学の世界の見解はどうなのでしょうか???
神経根の何らかの異常により下肢痛が生じているのなら、下肢そのものには異常がないと判断しているのです。それでは、下肢に生じている圧痛点はどう説明されるのでしょうか?
ヘルニアがどのようなメカニズムで根性痛を起こすのかは分かっていないのです。いろいろな説がありますが仮説なのです。
ヘルニアがあっても痛くない人はたくさんいます。手術をしてもよくならない人や痛みが再発する人はよくみかけられます。
安静の必要がないといわれてきています。治療法もさまざまです。これはもうヘルニアが原因の根性痛という前提、概念に大きな問題があるのではないでしょうか。