脊椎すべり症と脊椎分離症に対する腰椎安定化訓練についての初の無作為研究、結果は有効か?

First Randomized Trial of Lumbar Stabilization Training for Spondylolisthesis and Spondylolysis 

Are the Results Valid?


脊椎分離症や脊椎すべり症の治療によく用いられている理学療法のテクニックが、ついに無作為研究で厳密に吟味された。腰椎安定化訓練を支持する者はその結果に満足するであろう。一方、懐疑的な見方をする者は、研究に影響を及ぼす多数の関与因子を指摘するであろう。

Peter B. O'Sullivan医師とそのグループは、慢性の脊椎分離症または脊椎すべり症の患者44例を対象に腰椎安定化訓練の効果を検討した。その結果、10週間の安定化訓練プログラムにより、疼痛および機能障害の統計学的に有意な軽減が得られ、30ヵ月後の追跡調査時にも効果は持続していた(O'Sullivan et al.,1997.参照)。

「本研究の結果は、体幹の『安定性』に関与する筋肉に対する特殊な運動療法が、慢性的な症状のある脊椎分離症や脊椎すべり症の患者の疼痛および機能障害を軽減するのに有効だという初期の仮説を裏付けている」とO'Sullivan医師らは報告した。

彼らは、慢性の脊椎分離症、あるいはグレードIまたはIIの脊椎すべり症の患者44例を、10週間の腰椎安定化訓練プログラムか、各患者の担当医が指示した10週間の「通常の治療」のいずれかに、無作為に振り分けた。すべての患者は3ヵ月以上、症状が持続していた(症状の平均持続期間は2年余り)。

腰椎安定化訓練法

安定化訓練の最終目的は、腹直筋や外腹斜筋のように大きな捻転力を発生する筋肉で代用することなく、深部の腹筋を収縮させるように訓練することである。そのために、治療専門家は「abdominal drawing in maneuver」を行なった。

さらに、安定化訓練群の被験者に、椎間関節突起間の欠損部の近位腰椎多裂筋を協調活性化するよう計画されたテクニックで、深部の腹筋を収縮させる訓練を行なった(Richardson and Ju.1995.参照)。

対照群が受けた治療は種々雑多である。様々な運動療法プログラムと、各種疼痛緩和療法の組み合わせがその中身であった。

効果は明らか

O'Sullivan医師らの評価項目は、McGill疼痛問診票、Oswestry機能障害度問診票、可動域の評価、および表面筋電図に基づく筋の漸増パターンの評価である。

結果は、腰椎安定化訓練群の方が良好であると得られた。この群の被験者は、10週間終了時点で疼痛スコアが統計学的かつ臨床的に有意に低下し、機能障害の軽減もみられた。30週間の長期追跡調査時にも、症状および機能に関して対照群を統計学的に有意に上回る効果が認められた。

興味深いことに、30ヵ月後の追跡調査時には、腰椎安定化訓練群の被験者の多くが、腰椎安定化のための運動療法はもうやっていないと報告した。しかしながら、「日常生活の機能的活動の中で筋肉を協調活性化することだけは続けていた」という。O'Sullivan医師らは、腹部筋の筋活
性化における意識下および潜在意識下の変化があり、その結果、この方法で訓練した患者に長期的効果がみられたと確信している。

関与因子と考えられるもの

本研究は注意深く実施されているが、研究結果に影響した可能性のあるいくつかの因子が挙げられる。

対照治療は適切であったか?:本研究の全過程を通して、対照群には改善はみられなかった。しかしながら他の研究において、脊椎分離症および脊椎すべり症の患者は保存的治療によって著しく改善している。本研究における対照治療が最適ではなかったならば、試験的治療の価値が不当に高くなる傾向があっただろう。

プラセボ反応:腰椎安定化訓練群における効果の一部はプラセボ反応に関係していた可能性がある。腰椎安定化訓練群の患者に10週間の訓練を行なった治療専門家グループは、おそらくこの方法の熱心な支持者であっただろうと思われる。一方、対照群の患者は、彼らが受けた治療法に対して、それ程の熱意と確信を感じることはなかったであろう。しかしながら、腰椎安定化訓練群において長期間にわたり良好な結果がみられたことから、プラセボ反応は否定的と思われる。

診断が入り混じっていた:研究に2種類の疾患が含まれていなければ、これらの結果はもっと説得力があったであろう。本研究の44例の患者のうち18例が脊椎分離症で、残りは脊椎すべり症であった。

著者らは、脊椎分離症患者の骨折の程度を明確にしていない。もし被験者に早期疲労骨折があったとしたら、研究期間中に治癒したかもしれない。その場合、症状の改善は、その治療と関係があったかどうかはわからない。同様の研究を、治療前後の疲労骨折の状態について注意深く
調査して実施すると良いだろう。

活動に関する情報の欠如:本研究では、被験者の仕事上の活動や余暇活動に関する情報は報告されていない。これらが、症状や機能に対して容易に大きな影響を及ぼした可能性がある。一方の群が休息が多かったのではないだろうか?被験者の中にスポーツを避けた者がいたのではないだろうか?治療の介入がなされるのは、世間から隔離された状況下ではない。とりわけ30ヵ月におよぶ追跡調査を行なう研究ではその影響が無視できない。

それでも、著者らがこのポピュラーな訓練方法について科学的な見地に立って検討したことは評価されるべきである。本研究が、腰椎安定化訓練の利点を明確にする多くの研究の1つとなることが期待される。

参考文献:

O'Sullivan P et al., Evaluation of specific stabilizing exercise in the treatment of chronic low back pain with radiologic diagnosis of spondylolysis or spondylolisthesis, Spine, 1997; 22(24) : 2959-67. 

Richardson C and Jull G, Muscle controlpain control, What exercise would you prescribe? Manual Therapy. 1995; 1: 2-10. 


The BackLetter 1998・ 13(2) : 16.


(加茂)

無症候性の分離症やすべり症がるのはよく知られたことです。 

腰痛の訴えは腰椎すべり群の方がむしろ少なかった。 という研究さえあります。

痛みはほとんどは筋筋膜痛で、分離症やすべり症との関係は証明できません。よってこの研究はそもそもの条件の設定に問題があり。

「分離症やすべり症のせいだと言われている腰痛」に「いわゆる腰椎安定化訓練と称している体操療法」は効果があった、ということです。

何であれ、よくなればいいのです。「腰椎安定化訓練」・・・名前の付け方がよかったのでしょう。

http://junk2004.exblog.jp/3790798/

加茂整形外科医院