3種類(関節炎、片頭痛、背部痛)の有痛性疾患に伴ったうつ状態と不安状態:代表的国民サンプルより

Depression and anxiety associated with three pain conditions: results from a nationally representative sample

文献抄訳;ペインクリニック2005.1 Vol.26No.1


背景:有痛性疾患と精神病理の関係は、多くはうつ病に関して、臨床症例など偏った標本で調査されてきた。近年、一部の不安障害は、関節炎や片頭痛との関連がうつ病より強いことが示唆されている。大規模で偏りのない米国成人(25〜74歳)標本であるMidlife Development in the United States Survey(MIDUS)のデータを使用し、有痛性疾患と一般的な精神障害の関連を調べた。

方法:MIDUSのデータより,最近1年間における3種類の有痛性疾患(関節炎,片頭痛,背部痛)の既往を調査した。あわせて、同データから簡易混合式国際診断面接の尺度に基づいて診断されたうつ病、パニック発作、全般性不安障害(GAD)の有無を調査した。

結果:19.4%に関節炎、11.2%に片頭痛、20.3%に背部痛の既往を認めた。いずれかを認めた者は、全く認めなかった者に比較して,女性、コーカソイド、大学教育非修了者が多く、年齢が高かった。ロジスティック回帰分析で、各有痛性疾患と、うつ病、パニック発作、GADの間すべてにおいて統計学的に有意な正の関連(オッズ比1.48〜3.86,各々p<0,001)を認めた。人口統計学的変数、共存する有痛性疾患、痛み以外の症状による調整後も、関節炎とパニック発作の間、背部痛とGADの間を除き、各々の関連は統計学的に有意であった。有痛性疾患との関連は、うつ病よりパニック発作、GADの方が全体的に強かった。2つ以上の有痛性疾患の共存は、各精神障害との関連が強かった(オッズ比3.39〜6.91)。

考察:不安障害の方がうつ病より有痛性疾患との関連が全体的に強いことが、大規模で偏りのない標本で示された。痛みの治療を行う際には、不安障害をさらに注意深く発見、治療する努力が必要である。今後、外傷後ストレス障害も調査項目に含め、痛みと精神障害をより正確に評価する長期的な研究が必要である。


田中益司(大阪鉄道病院麻酔科)

加茂整形外科医院