アレルギーが腰痛のきっかけ?

Do Allergics Set the Stage for Back Pain?


ロサンゼルスで行われた最新研究で、腰痛とうつ病の新しい危険因子が提唱され、注目されている。UCLAのEric L.Hurwitz博士およびLos Angeles College of ChiropracticのHal Morgenstern博士は、「プライマリーケアの患者に最もよくみられる症状の2つである腰痛とうつ病は、その一部は、アレルギー反応やその他の炎症反応の際に放出されたサイトカインの遅発性作用が原因となっている可能性がある。ほとんどの腰痛治療の成績があまり芳しくないのは、このメカニズムのせいかもしれない」と述べた。(Hurwitz and Morgenstern,1998年を参照のこと。)

この研究は、英国のマンチェスターで開かれた腰痛プライマリーケア研究に関する第3回国際フォーラムで発表されたが、広く受け入れられたわけではなかった。スコットランドの研究者
Gordon Waddell博士は、「それらの因子の間に少し関連があったということだけ発表されましたが、因果関係はなにも示されていません」と述べた。

Hurwitz博士とMorgenstern博士は、第3回全米健康栄養調査(NHANES III)の20〜30歳の参加者
6,839名に関する面接結果と検査データについて検討した。彼らは「被験者に、過去12ヵ月間の腰痛歴、ならびに喘息および枯草熱の既往と現在の状態、さらには虫刺され、食物、アレルギー検査または皮下注射およびペットに対するアレルギー反応の既往に関する質問をしました」と述べている。さらに彼らは、重いうつ病のエピソードの既往および時期に関するデータも採取した。
ロジスティック回帰モデリングを用いて、腰痛、うつ病および様々なアレルギー反応の間の関連について検討した。

その結果、「喘息、枯草熱、ペットアレルギーまたは注射に対するアレルギー反応の既往を報告した被験者では、腰痛が報告される確率が高く[アレルギーの影響:オッズ比1.51]、重いうつ病と診断されたり「オッズ比1.58]、重いうつ病と腰痛の両方があることも多かった[オッズ比3.03]」と、報告している。

Hurwitz博士は、この研究が関連を示したに過ぎず、原因と結果の因果関係は明らかではない点を認めているが、生物学的には妥当であるという。彼は、インターロイキン1ーβのような起炎症性(pro-inflammatory)のサイトカインが、HPA(hypothalamic-pituitary-adrenal)軸に影響を及ぼすことが最近の研究で示唆されていることを指摘し、「炎症に伴うHPA軸活性化のマーカーであるアレルギー反応が、HPA軸の変化を引き起こすことにより、力学的もしくは精神的ストレス因子に対する異常な反応が起き、それに伴い臨床的には重いうつ病と腰痛という2つの症状が現われる、との仮説を立てました」と述べている。

RichardA.Deyo博士は、この結論に異議を唱え、データには他の解釈も成り立つと指摘した。「単に、うつ病患者はアレルギー症状や腰痛を訴えることが多い、ということなのかもしれません」とDeyoは言う。

フインランドのTapio Videman博士は、結論が真実かどうかに関わらず、この新研究を歓迎すると述べた。ここ20年来、同じ顔ぶれの腰痛の危険因子が医学的に注目されており、検討すべ
き新顔の登場を嬉しく思うと語った。

さらに研究を進めることで、アレルギーと腰痛とうつ病の相関関係が明らかになるだろう。この問題は、今後も研究材料にされるだろうと思われる。

参考文献:

Hurwitz EL and Morgenstem H, The effects of asthma, hay fever, and other allergies on major depression and low back pain, presented at the Third International Forum for Primary Care Research on Low Back Pain, Manchester, UK, 1998; as yet unpublished. 

The BackLetter 1998・ 13 (11): 124. 


(加茂)

http://junk2004.exblog.jp/d2005-02-09

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