RCTは椎間板手術を支持

RCT Favors Disc Surgery


英国の研究者らによると、中型の椎間板ヘルニアに対する椎間板手術を保存療法と比較した新規の無作為対照比較研究(RCT)は、1年後の時点では手術を支持する結果が出ている。Keith Greenfield博士と共同研究者は、1年後の経過観察で、手術によって治療した患者は神経根痛、腰痛および機能に関してかなりの効果が得られたことを見出した(Greenfield et al.,2002を参照)。

著者らによれば、“研究では最初の12ヵ月に有意な利点が報告されており、この格差がその後狭まるとしても差の大きさには価値があるだろう。どちらの群にも効果がみられる人とそうではない人がいるのは注目に値する”。研究者らは、さらに長期の経過観察後に治療が成功することを予測する因子を明らかにしたいと考えている。

Greenfield博士らは、腰痛および坐骨神経痛があり、MRIスキャンで小型から中型の腰椎椎間板ヘルニアが確認された88例の患者を対象に研究を行った。研究者らは、小型から中型のヘルニア(脊柱管の50%まで圧迫)に関係した坐骨神経痛の治療は、手術を実施するかどうかの“グレーゾーン”だと考えた。

手術の適応から除外されたのは、重症の坐骨神経痛、重大な神経学的症状、脊柱管狭窄および他の重大な病理学的異常を有する被験者であった。以前に脊椎手術を受けたことのある患者も除外された。

被験者を、標準化された顕微鏡視下椎間板切除術か、または運動、理学療法および患者教育(The Back Book [Roland M et al. The Stationery Office.London,1996.]も使用)からなる、積極的な保存療法プログラムに無作為に割当てた。研究者らは、ビジュアルアナログ疼痛スケール、Oswestry活動障害度インデックス、簡略型SF-36問診票および往復歩行試験を用いて、患者の経過を追跡調査した。

手術群の患者には、3,6および12ヵ月後の疼痛および活動障害スコァにおいて利点が認められた。べースラインにおいて、手術群および保存療法群の患者の平均下肢痛スコアは、各々10点満点中6.2および6.3であった(最大疼痛を10点とする)。椎間板切除術群の下肢痛レベルは、手術後突然低下した。これらの患者は、3,6および12ヵ月後の平均疼痛スコァが2.6,2.5および2.3であった。

疼痛は、保存療法群のほうは徐々に緩和し、3ヵ月後は5.26ヵ月後は4.812ヵ月後は3.9であった。腰痛スコアも同様のパターンをたどった。手術群の疼痛レベルは突然低下し、保存療法群はより漸進的に改善した。

活動障害度スコアも、ほぼ同様のパターンをたどった。手術群のOswestry活動障害度スコアは、べースラインの平均41.1から、3ヵ月後には25.2, 6ヵ月後には20.412ヵ月後に
は17.9
まで改善した「編集者注:スコアが低いほうが軽度の活動障害]。

保存療法群ではよりゆっくりとした改善がみられ、べースラインの平均スコアは41.2、3ヵ月後は37.4, 6ヵ月後は33.8, 12ヵ月後は28.5であった。

無作為および非無作為のさまざまな対照比較研究で、椎間板切除術が、難治性の症状を有する、選択された患者の疼痛および機能に関して早期の利点を与えることが示唆されている。ほとんどの研究によると、保存療法を受けた患者は、疼痛および機能に関して、手術を受けた患者にある時点で追いつく。それらの線が本研究のどの時点で合流するか、2年後か、4年後、6年後またはそれ以上後か、興味深いと思われる。

研究が完了し公表される時に、研究者が、研究の被験者選択基準に関する詳しい情報、および椎間板ヘルニアのより詳細な説明を提供してくれることを期待する。過去に行われた研究は、通常、椎間板ヘルニアを大きさ別に分類していなかった。

1人の研究者が、椎間板ヘルニアの大きさまたは脊柱管圧追の程度が、症状と相関するというエビデンスはほとんどないことを示唆した。したがって、これらが手術の適応に影響するかどうかは明らかではない。多くの臨床医と患者にとって、手術の最終的な適応は、もっぱら、難治性の疼痛とそれに関連する機能障害である。

しかし、科学的な研究によって、特に手術の適応としてふさわしい患者のサブグループを同定しようと試みるのは、重要なことである。

参考文献:

Greenfield K et al., Microdiscectomy vs. conservative treatment for lumbar disc herniation: A randomized clinical trial, presented at the annual meeting of the North American Spine Society, Montreal, 2002; as yet unpublished. 

The BackLetter 17(12) : 136-137, 2002. 


(加茂)

  治療前 3ヶ月後 6ヶ月後 1年後
手術 6.2 2.6 2.5 2.3
保存 6.3 5.2 4.8 3.9

手術の適応がもっぱら「痛み」という自覚的なことというのも納得のいかない点です。

保存療法がいずれ手術に追いつくのだが、その理由はなになのだろう。

保存療法でももっと速くよくなる方法があるのなら、それのほうがよい。

再発したときにまた手術をしなければならないということになりはしないか。

痛みの原因という根本的なことをどのように考えているのだろうか。

加茂整形外科医院