腰椎椎間板ヘルニアにおける神経根性下肢痛の本質

高橋弦,平山次郎*,大鳥精司*(千葉市療育センター整形外科,*千葉大学整形外科)

1997 / 12抄録 日本疼痛学会


腰椎椎間板ヘルニアに併発する神経根性下肢痛について、それが下肢の「何の」痛みなのかという事が論じられたことは少ない。今回、皮膚痛覚障害と筋圧痛との比較から根性下肢痛の本質について検討した。 

〔対象・方法〕

対象は片側下肢痛を呈し、MRIによりL4/5,L5/S椎間板のいずれかにヘルニアが確認された127例(男75例、女52例、平均年齢32.2歳)である。下肢を7領域に分割し、自発痛・皮膚痛覚障害・筋圧痛について、出現率、強度、および相互の領域的一致性を検討した。自発痛の強さは強・弱・無と分類した。また健側を対照として、皮膚痛覚障害は過敏・正常・やや低下・明らかな低下、筋圧痛は強陽性・陽性・正常と分類した。 

〔結果〕

症状出現率は自発痛と筋圧痛がともに殿部、大腿後、下腿後領域に高率であったのに対し、皮膚痛覚障害は末梢領域ほど高率であった。自発痛に対する領域的一致性(accuracy)は、皮膚痛覚障害は62%、筋圧痛は79%であった。

自発痛の強さは筋圧痛と相関関係が認められたが、皮膚知覚障害の性質(過敏・低下)や痛覚低下の程度との関連は認められなかった。 

〔考察〕

自発痛と筋圧痛は近位背側に現われ領域的関連性も高かったのに対し、皮膚痛覚障害は末梢側に現われ自発痛との領域的関連性は低かった。

解剖学的にはL4〜S2皮節は近位側ほど狭小となるが、逆に殿筋群はL5〜S2支配である。さらに、痛みを知覚している場所は通常、痛覚過敏となる。

以上の点を総合すると、椎間板ヘルニアによる根性下肢痛は本質的には「筋痛」であり「皮膚痛」としての要素は少ないと思われた。最近神経障害のモデルとして用いられる事が多い、末梢神経のloose ligationによる足底皮膚痛覚過敏ラットは、腰椎椎間板ヘルニア根性痛のモデルにはならないと思われる。


(加茂)

痛みの本質は「筋痛」ということは私が主張してきたところです。

「筋痛」=myalgia=myofascial pain=筋筋膜痛

だから、トリガーポイントブロック、鍼灸、ストレッチ、マッサージ、運動などで治るのです。

筋痛が起きている原因はストレス(交感神経の緊張)です。だから、心理療法も効果的です。

手術をしても治るとはかぎらないのはヘルニアが原因で筋痛が起きているのではないからです。

ヘルニアがあっても痛くない人はたくさんいます。

筋痛(大腰筋などの深い、大きな筋肉)が原因で姿勢のアンバランス→ヘルニア?(左右の一致?)

加茂整形外科医院