仕事に関連した筋・骨格系障害の定義:腰痛に間違ったレッテルを貼る許可証か?

Definition of a Work-Related Musculoskeletal Disorder : Licence to Mislabel Low Back Pain


新規の人間工学に関する0SHA提案の中心をなしているのは、仕事に関連した筋・骨格系障害(MSD)のあやふやな定義である。そしてMSDは、0SHAが改善および予防を保証している障害である。

筋・骨格系障害とは何か?人間工学的提案の作成者によれば、“筋・骨格系障害とは、筋肉、神経、腱、靱帯、関節、軟骨および脊椎椎間板の損傷および障害である。リスクファクターを有する肉体労働もしくは労働条件への暴露がMSDを引き起こすのであり、MSDには、足をすべらせたり、つまずいたり、転倒または他の同様の事故によって引き起こされた損傷は含まれない”
(www.OSHA.govに示されている提案を参照のこと)。

何千もの症状、疾患、機能障害および構造上の異常が、この定義に適合すると思われる。OSHA提案は、MSDの例として、腰痛、坐骨神経痛、手根管症候群、回旋腱板症候群、足根管症候群、外上穎炎および腱炎のような、とても特異的とはいえない各種の状態を引用している。しかしながら、提案では、急性外傷以外、いかなる疾患も除外していない。

0SHA提案におけるMSDの仕事との関連も、同じく、としている。“MSDの危険要因は、該当するMSDを引き起こすか、またはそれに寄与する可能性が合理的に見て高い人間工学的リスク
ファクターがその中に存在する肉体労働または肉体労働の条件である”と作成者は述べている。

0SHAが、仕事との関連性を示す証拠とした、質の良くない証拠を考えると、この定義は、OSHAに職場に介入する、前例のない権限を与えることになる。

医学への違法侵入

“仕事に関運するMSD”の分類には、医師または他の認可された医療関係者の参加は必要とされない。MSDと認可されるためには、“障害”は次の基準を満たしさえすればよい:

T.仕事中の暴露がMSDを引き起こしたか、またはそれに寄与した。

U.MSDは少なくとも以下のいずれかの状態になる:

A.医療関係者によりMSDと診断される

B.陽性の身体所見(これは、関節可動域の減少、筋力喪失または機能損失のような主観的なものであろう)。

C.MSD症状に加えて下記のうち少なくとも1つ:

1.治療
2.1日以上の欠勤
3.仕事の制限
4.配置換えまたは他の仕事への交替

漠然とした条件

残念なことに、仕事に関連したMSDの例には、雇用者、コンサルタントまたは医療関係者の、疲労は仕事と関係があるとの判断と組み合わされることにより、数日間の疲労というような漠然とした障害が、この中に含まれることもありうる。

労働者が、趾または肩甲骨に手が届かなくなったり、もしくはその他の関節可動域に障害が認められたりすれば、それらもMSDの根拠となりうる。この分類システムの下では、発生部位がは
っきりしない、背中、頸、肩、手首、足首の、一過性または間欠性の筋・骨格系疼痛は、全てその範晴に入ってしまうことになる。

もちろん、医療関係者は、これらの主観的決定から派生したさまざまな問題を扱わなければならないであろう。0SHAがこの新規の人間工学的基準を課せば、数十万もの労働者が、彼らが職業上のストレスから発生したと確信する病気を訴え、医療機関につめかけるだろう。

賢明な医療関係者なら、彼らの腰の症状は仕事に関係がないかもしれないと、労働者を説得しようとするだろうが、ひるんでしまうかもしれない。仕事に関連があるとの決定は、ある点で、政府当局がお墨付きを与えることになるであろうから。


TheBackLetter2000・15(3):31

加茂整形外科医院