エピドラスコピーの治療効果の発現機序

実験的馬尾・神経根障害モデルからみた検討

エピドラスコピーの治療効果の発現機序と今後の課題

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大谷晃司(福島県立医大整形外科、現:福島県立南会津病院) 

 Pain Clinic Vol.22 No.12(2001.12)


実験的馬尾・神経根障害モデルからみたエピドラスコピーの治療効果発現機序は,以下の2つにまとめられる.ひとつは,圧迫による神経障害に対して,癒着剥離操作そのもの,あるいは癒着剥離後の薬物投与による治療効果の可能性である。他方は,化学的因子による神経障害に対して,硬膜外腔の洗浄効果による化学的因子の除去による治療効果の可能性である。一方,実際の臨床における馬尾・神経根障害では,機械的因子と化学的因子が種々の割合で関与して病態を作り上げていると考えられる。しかし,どの程度の割合でそれぞれの因子が症状発現に関与しているかは全く不明である。また,エピドラスコピーの手技自体が,硬膜外腔の癒着剥離と洗浄操作が合わさった手技で,癒着剥離と洗浄操作を分割することはできない。したがって,機械的因子と化学的因子の関与がはっきりしない個々の症例において,エピドラスコピーの治療効果の予測やその機序について明確に述べることは現時点では極めて難しい。
この課題の解決のためには,詳細な自覚症状と画像所見を含めた他覚所見の把握,さらには治療効果の客観的な判定といった臨床的検討が重要である。このような地道な臨床例の積み重ねにより,エピドラスコピーの治療効果と治療効果発現機序が明らかにされると思われる。本稿の一部は,第47回麻酔科学会ワークショップ,第30回埼玉麻酔研究会特別講演で講演した。

加茂整形外科医院