急性むちうち損傷には早期McKenzie療法が有効か?

Early McKenzie-Style Treatment Better Than Standard Care for Acute Whiplash Injuries? 


スウェーデンで最近行われた無作為研究によれば、急性むちうち損傷の治療は、早期モビリゼーションおよび積極的なMcKenzie療法が、標準治療よりも有効であることが証明された。

“頻回の反復する制限範囲内での積極的運動と、力学的診断と治療とを組み合わせた治療は、初期の安静と軟性頸椎カラー使用の推奨および漸進的自己モビリゼーションからなる標準プログラムよりも、痛みの軽減により有効である”と理学療法士のMark Rosenfeld氏らは述べている(Rosenfeld et al.,2000)。

さらに、それらの症状の初期段階でMcKenzie療法を始めた患者は、遅れて治療を始めた患者よりも、痛みに関する結果が優れていた。本研究は、治療結果の評価尺度として、痛みと可動域のみを用いていたので、これらの治療法の影響全てを評価することは困難である。機能的障害、心理学的状態、長期欠勤またはQOLに関するデータは得られていない。

Spineに掲載された付随論説において、疫学者のDavid Cassidy博士は、本研究は、早期モビリゼーションおよび自宅での運動を含む積極的手法が有用であるという、さらなる根拠を提供すると述べている(Cassidy,2000)。

“これらの結果は、臨床医による最小限の治療と、自宅での運動と通常活動の再開に関するアドバイスを組み合わせた治療が、急性むちうち関連障害に対する最も良い治療法であることを示したMcKinneyおよびBorchgrevinkらによる以前の研究と合致する。これらの結果は、むちうち関運障害患者に通常活動を早期に再開するよう臨床医は熱心に奨励すべきであるという、むちうち関連障害に関するケベック特別調査団の主勧告の一つを確認するものである”(McKinney,1989;Borchgrevink et al.,1988;Spitzer et al.,1995)。

研究者らは、急性むちうち損傷の治療を受けるために、29のプライマリーケア施設、3つの救急病棟およびスウェーデン南西部のいくつかの個人開業医を受診した後、この研究に登録された97例の患者について検討した。頸椎骨折、頸椎脱臼、頭部外傷、慢性頸部疾患、アルコール中
毒、痴呆、重篤な精神疾患およびその他の重篤な疾患のある全ての患者は研究から除外された。

Rosenfeld氏らは、被験者を次の3群のいずれかに無作為に割り当てた。(1)この研究に参加後96時間以内に積極的治療を開始;(2)この研究に参加してから2週間後に積極的治療を開始;(3)“標準的治療”。

標準的治療の内容は、安静治療、軟性頸椎カラーの使用、“損傷後数週間”の漸進的な活動再開であった。臨床医は、標準的治療群の患者に、損傷メカニズム、適切な運動に関するアドバイスおよび姿勢矯正の指示に関する情報を提供するパンフレットを提供した。

積極的治療では、緩やかな頸部の自動回旋運動を各方向に最高10回まで日中1時間おきに繰り返した。“自動車衝突事故の20日後に症状が持続している場合、McKenzie式プロトコルによる動的力学的な評価法を用いて患者を検査した”とRosenfeld氏らは報告している。研究に参加し
た治療専門家は、この評価に基づいて、回復を促進させるために、頸部運動に関する別の指示書を提供した。

早期積極的運動治療の利点

積極的運動治療群と標準的治療群の間には、疼痛緩和においてかなりの統計学的に有意な差があった。たとえば、早期積極的運動治療群の被験者は、6ヵ月後の経過観察時のビジュアルアナログ疼痛スケール(VAS)スコアが平均30ポイント低下した。この群の90%は、6ヵ月後の時点で痛みがほとんどないか、もしくは“弱い”痛み(疼痛スコアで10ポイント以上低下)しか有していな
かった。

対照的に、標準的治療群では経過観察で痛みのごくわずかな増強がみられた。6ヵ月後の時点で疼痛がほとんどないか、もしくは、痛みが“弱い”患者は47%に過ぎなかった。

早期積極的運動治療群は、痛みに関して、遅れて開始した積極的運動治療群よりも明らかに優れていた。早期群の疼痛スコアが(治療開始前の平均値37から)平均30ポイント低下したのに対し、遅れて開始した群では(治療開始前の平均値35から)15ポイントしか低下しなかった。

6ヵ月後の経過観察時には、3群間について可動域には統計学的に有意な差はなかった。

より多くの受診回数

積極的運動治療群の患者は、標準的治療群よりも、ヘルスケアサービスから注意を向けられることが多かったように思われた。積極的運動治療群の受診回数は平均4回であったが、一部のマネージドケア組織からは“最小限の”治療としては適格でないとみなされた。

論文の著者らは、標準的治療群の治療診察の総数を報告していないが、それは1回(最初の診察)になんらかの治療がプラスされていると思われた。

この研究における疼痛緩和における群間差は劇的であったが、モニタリングされてない何らかの因子が結果パターンに影響した可能性が考えられる。心理学的苦痛、障害度、就労状況、保険金請求に関するデータをみれば、それは明らかになるであろう。

この改変されたMcKenzie療法を、他の早期積極的治療法、または通常活動を再開するようにというアドバイスしか行わない治療法と比較する研究の準備が、本研究で整ったように思われる。

むちうち治療の研究では、長期間の経過観察を行うことが将来において有用であろう。むちうち関連損傷のコスト負担の大部分は、長期難治性の症状や障害を有するごく少数の患者から生じている。この群に好ましい影響を与えることこそ、あらゆる治療法の大きな目標であろう。

参考文献:

Borchgrevink GE et al., Acute treatment of whiplash neck sprain injuries. A randomized trial of treatment during the first 14 days after a car accident, Spine, 1988; 23:25-31. 

Cassidy D, Point of View, Spine, 2000; 25( 1 4): 1 787. 

McKinney LA, Early mobilization and outcome in acute sprains of the neck, British Medical Journal, 1989; 299:1006 -8. 

Rosenfeld M et al., Early intervention in whiplash-associated disorders, Spine, 2000; 25(14):1782-7. 

Spitzer W et al., Quebec Task Force, Scientific Monograph on Whiplash-Associated Disorders, Spine, 1995; 20: lS-73S. 


The BackLetter 15(9): 105, 2000. 

加茂整形外科医院