うつ病は高齢者の健康に有害:軽度のうつ病でも高齢者の免疫系を弱体化させる可能性がある


うつ病は高齢者の精神的健康のみならず、身体的健康にもリスクとなりうる。新しい研究によって、たとえ軽度であっても慢性のうつ病は感染症やその他の疾患を撃退する能力を弱めることが明らかにされた。

本研究のみならず他の最近の研究でも、うつ病症状は加齢に伴って徐々に起こる免疫系の弱体化を強め、加速することが示唆されている、と研究者らは述べる。

『Journal of Abnormal Psychology』 2月号に掲載された研究では、高齢者78名(平均年齢73歳)を対象に、感染病原体の撃退に必要な白血球産生能を検査した。研究者らによると、軽度の慢性うつ病をもつ高齢者では、研究開始時と18カ月後の追跡調査とも免疫反応が良好でないことが明らかになったという。さらに、年齢が高くなるほど、ウイルスおよび細菌に対する免疫系反応が悪化したという。

現在、高齢者の57%は人生後半のある時期で何らかの形の慢性うつ病に病んでいると推定される。このため、うつ病に病む高齢者を積極的に特定し、治療する試みが必要であると研究者らは述べる。

「うつ病症状の有症率は高齢者で高いとみられるものの、未発見で未治療のケースが多い」と著者らは記述している。「われわれの知見は、うつ病症状の発見と治療が、高齢者における至適免疫機能の維持に重要であることを示唆しているのだ」という。

軽度のうつ病でも当然治療を受けるべきである、と研究者らは述べる。事実、研究開始時および終了時にうつ病の顕著な症状があると訴えた患者22名のうち、正式なうつ病診断基準を満たしていたのは半数未満であった。すなわち、診断基準を満たしていない患者たちは、現在の診断基準ではうつとみなされないのである。

「本研究においては、免疫に影響を及ぼしているのはうつ病の重症度ではなく、うつ病に罹患した期間の長さであると思われる」と研究著者であるジョンズ・ホプキンズ大学医学部のLynanne McGuire, PhDはニュース・リリースで述べる。

先行研究において、強力な社会的支援が健康に良い影響を及ぼすことが示されている。社会的支援の欠如、あるいはうつ病高齢者の社会的支援を求めない姿勢もまた、本研究で明らかにされた免疫低下と健康への悪影響に関与している可能性がある、と著者らは指摘している。

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