公開シンポジウム 【慢性痛と運動系〜運動器の痛みを探る〜】

はじめに 熊澤孝朗(愛知医科大学医学部痛み学教授名古屋大学名誉教授)

2005年10月23日名古屋市


慢性痛の問題は、患者数の多さ、そしてその確たる治療薬がないというようなことから、医療経済的な問題にも及び、世界的にも大きな問題となっている。今世紀の始めからの10年は、「運動器の10年」(WHO)、「痛みの10年」(アメリカ議会)と宣言され、診療と研究について2010年までに大きく前進させることを目的としている。これらの宣言は異なった組織によって行なわれたものであるが、その意味するところは大いに共通している。

神経系の可塑的変容の結果である慢性痛の治療には、30年ほど前より世界各国に学際的痛みセンターという施設が多数立ち上がっており、効果を上げている。残念ながら日本においてそのような施設はまだ一つも存在しない。

世界の学際的痛みセ.ンターでは、慢性痛患者に対して心理療法・運動療法を取り入れた治療を行なっている。この学際的痛みセンターの治療効果については世界的に認められているが、心理的効果に偏った面があり、慢性痛と運動器(運動系)という観点では、世界的にもまだ熟していない。

本シンポジウムでは、特に、慢性痛と筋の働きに焦点をあて、その診療に積極的に携わっている方々にお話しいただき、慢性痛の治療への新しい道を探るべく、充分な討論をすることを目的としている。前目に開催する非公開ミーティングから始まって、シンポジウムメンバーは2日間にわたって議論を深める。どのような方向が見つけられるのかは分かっていないが、この会を一つの試みとして、今後にも続いていくような会になることを念じている。

ノイロトロピンのパンフレットより

 

急性痛

慢性痛

組織障害に伴う痛みで、因果関係が明瞭 組織障害の治癒後にも続く痛みで、はっきり
した器質的原因を見いだせない
交感神経の緊張
拍動増加・血圧上昇、呼吸促進
活動的体勢
自律神経変調
不眠・食欲不振、疲労、性欲の減退
活動性低下
不安感が中心 抑うつ的気分
痛みに注意が集中するが、治れぱ全く後遺症
を残さない
抗うつ薬、抗痙撃薬、トランキライザーが中
心で、消炎鎮痛薬はむしろ補助的
薬物療法は消炎鎮痛薬、筋弛緩薬が中心 痛み自体が病気、全人間性の崩壊

兵頭正義:痛みのマネージメント慢性疼痛症候群ほか

慢痛性疾患では、急性の強い痛みが和らいだ後にも、不快な痛みやそれに伴うしびれ、だるさなどの急性期の痛みとは異なる長びく痛みを訴える症例は少なくありません。

このような慢性疼痛症例は、自律神経の変調、局所循環障害や精神・情動的不安などの慢性
化因子のほか、痛みの下行性抑制系などの生体内鎮痛機構の機能低下が注目されています。
ノイロトロピン錠は痛みの下行性抑制系の活性化、痛みの悪循環の改善という消炎鎮痛剤と
は異なる角度から痛みを改善します。

加茂整形外科医院