慢性疼痛に関する新ガイドラインは手術に対して懐疑的な見方を提示

New Chronic Pain Guidelines Offer a Skeptical View of Surgical Solutions. 


新ガイドラインでは慢性腰療の冶療としての手術の実施には慎重であるよう推奨している。

新しく発表された、エビデンスに基づく慢性腰痛の治療ガイドラインによって、米国における脊椎手術の実施率に関する論争が活発になることは間違いないだろう。もし欧州委員会による新しい勧告が米国で採用されていれば、変性性疾患およびその他の非特異的腰痛に対する手術実施率は急落したであろう。

ガイドラインは欧州委員会の研究理事会が後援し、科学的エビデンスに関する注意深く体系化されたレビューに基づいて作成された。別個の集学的チームが、厳密に体系化された手順に従って、無作為比較研究(RCT)および体系的レビューで得られたエビデンスの格付けと再検討を行った。現在、エビデンスに基づく急性腰痛、非特異的慢性腰痛の治療、および腰痛予防に関するガイドラインが完成し、欧州委員会のホームページ(www.backpaineurope.com)で公開されている。

慢性腰痛ガイドラインの作業委員会は、変性性椎間板疾患による慢性症状の治療における固定術の役割に関して相反するエビデンスを見出した。スウェーデンで行われたRCTでは、固定術
が従来の保存療法よりも有効であり費用対効果がやや優れていることが明らかになった(Fhtzell et al.,2001を参照)。しかし、ノルウェーおよび英国のRCTにおいて、手術は体系的な運動療法プ
ログラムと認知療法の組み合わせを上回る有意差は認められなかった(Brox et a.,2003; Fairbank et al.,2004を参照)。さらに英国の研究では、手術には保存療法の約2倍の費用がかかった。

新ガイドラインでは、慢性腰痛の治療としての手術の実施には一虞重であるよう推奨している。ガイドラインによると、“推奨された他のすべての保存療法を2年間行って効果がなく、その地域では認知療法と運動療法を組み合わせたプログラムが利用できない場合を除いて、慢性腰痛に対して手術を推奨することはできない。手術による合併症の発生率が高いこと、社会が負担す
る費用、およびfailed back surgery症候群の患者の苦痛も考慮して、注意深く選択された重症の疼痛患者に限り、この手術を考慮すべきであると強く推奨する”という。

慢性腰痛のガイドラインは、手術の費用および合併症の発生率を徐々に押し上げる原因となっている脊椎の器具類を固定術に日常的に併用することについても、異議を申し立てている。

新ガイドラインによると、“過大な労力を要し高価でより危険性の高い術式が、内固定を行わない後側方固定術という最も簡単で最も費用の安い術式よりも優ってはいないことを示す、説得
力のあるエビデンスが存在する”(Hildebrant et al.,2004を参照)という。

脊椎手術の適応に関して、米国と欧州の間には非常に大きな差異が存在するようである。米国内ですら、腰痛の治療法としての手術の利用状況には顕著な多様性が認められる。これらの格
差をなくすことができなければ、この分野全体の先行きも厳しいものになるだろう。

参考文献:

Brox JI et al., Randomized clinical trial of lumbar instrumented fusion and cognitive intervention and exercises in patients with chronic low back pain and disc degeneration, Spine, 2003; 28(17): 1913-21 . 

Fairbank J et al., A randomized controlled trial to compare surgical stabilization of the lurnbar spine versus an intensive rehabilitation program on outcome in patients with chronic low back pain, presented at the annual meeting of the International Society for the Study of the Lumbar Spine, Porto, Portugal, 2004; as yet unpublished. 

Fritzell P et al., Lumbar fusion versus non-surgucal treatment for chronic low back pain: A multicenter randomized controlled trial from the Sewedish Lumbar Spine Study Group, Spine, 2001 ; 26(23):2521-32. 

Hildebrant J et al., European Guidelines for the Management of Chronic, Nons'peclfic Low Back Pain. The Research Directorate General of the European Commission, November, 2004; www.backpaineurope. com. 

The BackLetter 20(2): 17, 2005. 

加茂整形外科医院