トリガー・ポイント


トリガー・ポイント注射の奏効機序  

種々の原因により生じた筋緊張は,虚血を引き起こし,内因性の発痛物質の蓄積を招来して,痛みや凝りを生じる。つまり,局所の痛みは,筋に分布する痛覚受容器が過敏になることによりもたらされると理解される。これに対するTP注射の奏効機序としては,痛みによるviscious cycle of reflexesを不活性化することにより,局所での血流を改善して,筋肉の緊張を和らげ,内因性の発痛物質を希釈して洗い流し,さらには,生体のホメオスターシスにより痛みの根本原因を治癒すると推察される.また,細胞内カリウムの放出が起こり,神経線維の分極を生じるとする説もある。

Pain Clinic 2002.3 Vol.23 No.3「 トリガーポイント注射」より


ペインクリニックの適応疾患のなかで,肩凝りや腰痛症に代表される筋筋膜性疼痛症侯群(myofascial painsyndrome:MPS)が占める割合は大きく,また,他の疾患においても二次的な筋緊張を生じている症例が多く存在する。これら筋筋膜の異常に起因する疼痛,凝りに対しては,まずトリガーポイント(trigger point:TP)への局所注射(trigger point injection:TPI)から治療を開始するべきである。ペインクリニックで用いる治療手技のなかで,このTPIは初歩的な手技のひとつと言えるが,最も普遍性に富んでおり,かつきわめて治療効果の高い治療法であると考える.また,施術者の知識と経験の違いにより,その効果に大きな差異を生じる。

森本 昌宏   近畿大学医学部麻酔科学教室

Pain Clinic ’99.4

加茂整形外科医院