腰痛の治療として腰椎手術は集中的リハビリテーションより有効か?

NCP Rheumatology Medicine 2005年11月号Vol.2 No.11


診断のポイント

腰痛の管理において、腰椎固定術は集中リハビリテーションより有効ではない

背景

腰痛に対する治療戦略として何が最善であるかは不明である。多くの治療手技は非侵襲的ではあるが、最近は腰椎固定術が管理方法として広く行われている。腰痛に対する侵襲的治療の有効性を立証するには、さらなる研究が必要である。

目的

慢性腰痛患者の治療戦略として、腰椎固定術と集中的認知行動リハビリテーションの有効性を比較すること。

デザインと介入

この多施設共同無作為化対照試験は、脊椎固定術が適当であると考えられる、18〜55歳の慢性腰痛患者(持続期間1年以上)を対象とした。以前に脊椎固定術を受けたことのある患者は除外した。腰椎固定術に割り付けられた患者の手術法は、指定外科医の裁量に任された。非手術群に割り付けられた患者は、教育と運動の両方をによる集中リハビリテーションプログラムに参加した。運動は理学療法士の助言により提案され、個々の患者の必要に応じて調整された。主要筋群のストレッチと強化、脊椎の柔軟性と強度の向上、有酸素運動による心血管系の持久力の向上に運動の重点をおいた。この群では臨床心理士への相談が可能であった。解析はintention to treatによって実施し、追跡調査は両群とも2年間行った。

評価項目

主要評価項目は、腰痛専用の質問票により得られたOswestry腰痛障害指標スコアの好ましい変化、および試験開始時と2年間の追跡調査終了時に測定した標準的な歩行テストとした。副次的評価項目は、Short Form 36(SF-36)の一般的健康質問票スコアの好ましい変化、心理学的評価、観察された合併症などとした。

結果

患者合計349例がこの試験に参加した。腰痛患者を、手術群(n=176)または集中リハビリテーション群(n=173)に無作為に割り付けた。2年間の追跡調査後、合計284例(81%)から完全なデータを得た。追跡調査データの解析によると、Oswestry障害指標スコアは手術群では46.5(SD 14.6)から34.0(SD 21.1)へ、リハビリテーション群では44.8(SD 14.8)から36.1(SD 20.6)へ変化し、手術群のほうが大幅な改善を示した。群間差の推定平均値は−4.1であった(95%CI −8.1〜−0.1、P=0.045)。不足した追跡調査データを補完すると、群間差の平均値は−4.5に増加した(−8.2〜−0.8、P=0.02)。しかし手術にはリスクがあり、費用も余計にかかることを考慮すると、臨床的にはOswestryスコアの改善はごくわずかであると考えられた。手術群の19例で術中の有害事象が観察された。リハビリテーション群の患者では合併症はみられなかった。

結論

腰痛患者の症状緩和に関して、腰椎固定術が集中的リハビリテーションより有効であるという明確なエビデンスはない。

原論文:Fairbank J et al. (2005) Randomised controlled trial to compare surgical stabilisation of the lumbar spine with an intensive rehabilitation programme for patients with chronic low back pain: the MRC spine stabilisation trial. BMJ 330: 1233-1238

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