高血圧によって腰痛を予防できるのだろうか?

Can High Blood Pressure Prevent Back Pain?


慢性腰痛を予防するために意図的に血圧を上昇させるのは、愚かである。しかしノルウェーで行われた研究は、高血圧が慢性腰痛および他の慢性筋骨格系愁訴を予防する可能性のあることを示唆している。

しかし、この仮説は腰痛に関する文献(ほとんど研究されたことがないが)による幅広い支持を得られないため、“可能性がある”という言葉に重点をおかなければならない。

神経科学者のKnut Hagen博士らは、1980年代と1990年代にノルウェーのNord-TrØndelag郡で実施された2つの大規模な公共研究において、高血圧と慢性筋骨格系疼痛との関連を調査した(Hagen et al.,2005を参照)。

博士らは、慢性筋骨格系愁訴を、前の年に3ヵ月以上持続した筋肉および関節の疼痛またはこわばりと定義した。解析の段階によって使用した正常血圧および高血圧の定義は異なっていた。

カットオフ値にもかかわらず、収縮期および拡張期血圧が高い被験者は正常血圧の被験者よりも筋骨格系疼痛を訴えることがはるかに少なかったという点で、結果には一貫性がみられた。

著者らによると、“高い収縮期および拡張期血圧は慢性筋骨格系愁訴の有病率が10〜60%低いことと関連し、血圧上昇に伴い慢性筋骨格系愁訴の有病率が低下するという、正比例の傾向が強く認められた”という。著者らの予測によると、高血圧の被験者は正常血圧の被験者と比較して慢性腰痛の有病率が約30〜50%低かった。

興味深いことに、結果は、解剖学的部位にかかわらずすべての年齢群において、また男女ともに一貫していた。降圧剤を使用して調整した後でも、血圧が高いことと筋骨格系疼痛のレベルが低いこととの関連は引き続き認められた。

高血圧によっていかにして慢性疼痛から保護されるのかは明らかではない。しかし著者らは、高血圧の被験者における疼痛レベルが低かった

参考文献:

Hagen K et al., Does hypertension protect against chronic musculoskeletal complaints? Archives of Internal Medicine, 2005; 165: 916-22. 

Von Korff M et al., Chronic back pain and physical-mental comorbidity in the United States, Pain, 2005; 1 13: 331-9. 

The BackLetter 20(5): 50, 2005. 

加茂整形外科医院