正確な診断

「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」より  (医道の日本社)

著:Dimitrios Kostopoulos and Konstantine Rizopoulos

訳:河喜田健司(明治鍼灸大学生理学教室教授)


生存本能はすべての生物が共通に持っている。疼痛は生存に敵対するので、人々は疼痛を避け、、和らげるための仕組みや方法を考え出そうとする。しかし、疼痛との戦いに疲れ、その望みが持てなくなった人々は、疼痛とともに生きることを学ぶのである。

疼痛や筋骨格系機能障害についての診断、治療に携わる医療従事者の職業にはいろいろあるが、病的な状態を効果的に治療するには、まず的確な診断が欠かせない。ところが、医学の進歩にもかかわらず、特に“ハイテク”といわれる診断装置が用いられる分野では、臨床家にとって的確な診断を下すことが大変困難な場合がある。それは、身体的、体性ー内臓的、体性ー情動的な疼痛や機能障害の主な原因として、筋筋膜トリガーポイントの可能性があるからである。

骨格筋は全体重の40%を占めているにもかかわらず、多くの医学教育施設において、筋骨格系については最低限のことしか教えられていない。このことが、筋筋膜性疼痛に対して多くの誤った診断が行われている現状の説明になるかもしれない。理学療法士らは筋骨格系について詳しく勉強するが、筋筋膜トリガーポイント症侯群に関する問題を扱った臨床カリキュラムはほとんどない。

多くの場合、臨床家は自分が臨床に従事するようになって初めてこの症侯群に出合う場合が多い。そしてそれは、従来の診断や治療で患者の問題が解決できない場合が大半なのである。

加茂整形外科医院