トリガーポイントの特徴に関する研究報告  森本昌宏

トリガーポイントーその基礎と臨床応用ー  

森本昌宏 編著(近畿大学医学部麻酔科学教室助教授)   真興交易(株)医書出版部


いずれにしても、圧痛部位と侵害受容器の感作との関係については広く知られるところではある。血流の低下が存在する部位で筋収縮を繰り返すと、筋肉痛を生じることも事実である。これらからは筋線維の持続的な収縮が血流の低下を招来し、プロスタグランジンなどの産生により侵害受容器の感作が生じると推察される。この点に関して、本書の分担執筆者であるItohらは、TPはポリモダール受容器の感作により形成されるとの説を提唱している。

ここでは、ウサギの腓腹筋の伸張性収縮運動後にみられる圧痛部位は索状硬結に限局して出現し、その部位への刺激により典型的な関連痛が出現することをその根拠としている。つまり繰り返しての伸張性収縮運動により筋膜や筋細胞膜が損傷を受け、その炎症ならびに修復過程で産生された炎症物質がポリモダール受容器を感作すると推察している。

さらに圧痛部位や索状硬結は、インドメタシンの投与により消失するとしている。なお、ここで問題となるのは、伸張性収縮運動後に生じたTPが1週間程度で消失することであるが、血流遮断によりその期間が延長することも確認されている。


組織学的には、線維内結合織に局在性の浮腫と血小板凝集を伴った変染色物質の存在を特徴とする筋線維炎を認めるとの報告もある。

Cの局所単収縮反応に関する研究では、Hongらが、ウサギの下肢の索状硬結に刺激を加えてみられる反応が、運動終板周囲への刺激でもみられること、上位の脊髄を切断した後にも出現することから脊髄反射であると結論している。また、逃避反応であるジャンプ徴候は、侵害刺激に対する通常の反応であり、このような脊髄反射はSimonsらが唱える運動終板周囲に限局した反応の存在は考え難い。

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