抑うつと疼痛発現の頻度に強い関連


〔米カリフォルニア州パームスプリングズ〕Eli Lilly社(インディアナ州インディアナポリス)の上席研
究者Rebecca Robinson氏らは「うつ症状のある人は、ない人より疼痛が生活の一部となっている」と米国疼痛医学会(AAPM)の第21回年次集会で発表した。この研究では慢性疼痛のある人で抑うつが随伴すると、そうでない人に比べて疼痛・機能障害が重度で、薬物服用量も多いという知見が得られた。

うつ症状がさらに悪化

筆頭研究者のRobinson氏は、これまでの研究で「うつのある人は身体的な疼痛の症状を多く訴える傾向があり、うつ症状に疼痛の随伴症状がある人は、疼痛のない人に比べてうつ症状のアウトカムが悪いことが明らかになっている」と述べた。さらに、うつ症状が見られる人の生活では、疼痛により経済的負担や症状関連の負担が増すという。

疼痛と抑うつの併存を追跡して、両者の関係を明らかにするために、同氏らは23年にわたる縦断的研究のデータを検討した。1980年に募集された大うつ障害の治療を受けた患者424例と、背景因子を一致させた地域社会の対照群424例は、登録時と2003年に患者健康質問票に郵送で回答した。

同氏らによると、共変数の調整後、23年後のフォローアップに応じた被験者はうつ群が248例で、
このうちデータがすべて収集できた233例中145例(62%)が疼痛症状を示し、88例(38%)は疼痛がなかった。
対照群でフォローアップできたのは273例、データが収集できたのは263例で、疼痛症
状を示したのは127例(48%)、なかったのは136例(52%)であった。さらに大うつ障害が生じた割合を見ると、疼痛のあるグループで15.9%、疼痛のないグループで6.3%であった(P<0.013)。

毎日の服用薬も増加

研究開始時にうつ治療を受けていた人ではうつ病のない人に比べて23年後に回答した患者健康
質問票で疼痛症状が開始時よりも多く見られた(2.99vs.2.14,P〈0,001)。慢性疼痛等級尺度をもと
にしたフォローアップで、うつ群は疼痛関連の機能障害が対照群より多かった(30.16vs.18.12,P<0.001)。

23年後のフォローアップで疼痛と抑うつの症状をともに報告した人は、抑うつ症状のない人に比べて毎日の薬剤服用が有意に多かった(3.59vs.1.81,P<0.001)。また、疼痛により活動に支障を来した月当たり日数も多かった(5.38vs.3.39,P<O.015)。23年後のフォローアップ時に疼痛のない人の間で、抑うつのある人とない人の唯一の違いは、今までに服用した薬剤数であった(2.38
vs.0.933,P<0.001)。

Robinson氏は「今回の研究の知見は、慢性疼痛患者を治療する際の、うつ病スクリーニシグの重要性を示した」と締めくくった。

加茂整形外科医院