硬膜外ステロイド注入の効果は限定的:米国神経学会が腰痛治療ガイドライン

Medical Tribune [2007年4月19日 (VOL.40 NO.16) p.62]


〔米ミネソタ州セントポール〕 米国神経学会(AAN)はタフツ大学(ボストン)神経学のCarmel Armon教授を中心に腰痛治療に関するガイドラインを作成し,Neurology(2007; 68: 723-729)に発表した。ガイドラインは、下肢に放散する腰痛の短期的除痛に関しては硬膜外ステロイド注入の効果は限定的なうえ、長期的な除痛では効果が得られないことを明らかにした。

臨床上意味がない

AANの会員で,ベイステート医療センター(マサチューセッツ州スプリングフィールド)神経科の医長でもあるArmon教授はガイドラインの策定に当たり、他の策定委員とともに硬膜外ステロイド注入に関する科学的分析を行った。ガイドラインによると、同療法後の 2 〜 6 週間は短期的除痛が得られるが、除痛の程度の平均値は小さい。

同教授は「ある程度の除痛は得られたが、硬膜外ステロイド注入で得られる下肢痛や腰痛の緩和の程度は、効果時間を平均すると臨床上意味のあるほど長くはなかった」と述べている。

ガイドラインによると、硬膜外ステロイド注入は手術までの時間を稼ぐのに有用なわけでもない。つまり、3 か月を越えるほどの除痛は得られないとしており、時間稼ぎのためにルーチンに実施することを推奨していない。

同教授は「信頼できるデータが少ないにもかかわらず、慢性腰痛を治療するために硬膜外ステロイド注入を行う回数は経時的に増えている。1999年のメディケア請求による最近のデータでは、腰部硬膜外ステロイド注入はメディケア加入の4,040万人に対して実施され、4,990万ドルが支払われた」としている。

さらに同教授らは、神経根性頸部痛を治療するために硬膜外ステロイド注入を行うことに関しては十分なエビデンスがないことも見出し、「硬膜外ステロイド注入に関しては質の高い科学的研究は少なく、このレビューも完全とは言えず、その有効性を判定するには,さらに洗練された研究デザインが必要である」と指摘している。


(加茂)

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p145 ただし、保存療法に反応しない神経根症状のある患者にかぎり、手術を避ける手段としてステロイド剤による硬膜外ブロックを一時的に用いてもかまわないとしています。

局所麻酔なら、神経伝達を遮断するのでその有用性は理解できるが、ステロイドをなぜ使うのか全く理解できない。

この文献にも神経根性頸部痛という意味不明の概念が書いてあるところをみると、結局、よく分かっていないのだろう。

加茂整形外科医院