夏樹静子さんの場合 「私の腰痛放浪記・椅子がこわい」
文春文庫
この本は私の遺書になったかもしれない
腰痛で三年間苦しみぬいた著者の感動の闘病記
「私は1993年1月から約3年間、原因不明の激しい腰痛とそれに伴う奇怪とさえ感じられるほどの異様な症状や障害に悩まされた。(中略)私は心身共に苦しみ抜き、疲れ果て、不治の恐怖に脅かされて、時には死を頭に浮かべた」
突然、腰痛に襲われ、三年間あらゆる治療を受けた末に完治した感動の闘病記。
文春文庫 「私の腰痛放浪記・椅子がこわい」 より
「先生は心療内科でいらっしゃるから、何でも心因に見えてしまうんじゃありませんか」
私は相当失礼な本音を、なるべくおだやかに尋ねた。
「いや、その反対で、われわれこそ十二分に器質的疾患がないかどうかを疑ってかからなければならないのです。もし何か別の病気があるのに心因性の治療ばかりしていたら大変なことになるでしょう。それであなたにも過去の検査や治療歴などを詳細にお聞きしたわけです」
「でも、心因でこれほどの激痛が起きるとは考えられません」
「心因だからこそ、どんな激しい症状でも出るのですよ。そして神経質な人ほど、自分ほど苦しいものはないと思いこんでいるんですね」
・・・そもそもの最初からこの腰痛が心因で発生したなどとは天から受けつけられなかった。
先生もすぐさま私を説得しようという姿勢ではなく、「少くとも心因性の要素が大きく関与している」ことだけは強調された。
作家としての生き方も、同じように走り続けてきたのではないか。今、休息を必要とし、身体もそれを要求している時、立ち止まることがすなわち心身の不安定に直結してしまうタイプではないだろうか?
以上、本文より
十二分に器質的疾患がないかどうかを疑ってかからなければならないのです。
- レントゲンやMRIで検査した結果たまたまヘルニアや分離症、すべり症、狭窄症が見つかった場合、それが器質的疾患だという「レッテル貼り」がなされていないか。
- 一度レッテルを貼られると、それを取り除くのに苦労することもある。
- 激しい痛みを伴う器質的疾患として鑑別しなければならないのは、悪性腫瘍(転移癌)、感染症、圧迫骨折。
心因だからこそ、どんな激しい症状でも出るのですよ。
臨床経験からもそのとおりで、痛みが心に大きく責任があるものほど、強い痛みを訴える傾向にあります。
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一口に心因性といってもその温度差は大きい
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心因性、心身症、神経症、これらの用語の使い分けも発表者により微妙に違い、誤解が生じることもあります
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神経症やうつは普通、心身症にはいれません
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悪性腫瘍、感染症、骨折など明らかな外傷を除いたすべての腰痛(筋骨格系の痛み)は心身症です。構造異常が痛みの原因ではないのですから
×椎間板ヘルニアは心身症だ
○椎間板ヘルニアによると言われている腰痛、下肢痛は心身症だ
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腰痛(心身症)でも神経症傾向や、うつ傾向のものもあります