脊柱管狭窄症の画像:画像所見は症状とほとんど関連性がない

THE BACK LETTER No.3


ノルウェーで最近行われた綿密な研究によれぱ、画像診断から脊柱管狭窄症の検出は不可能である。「腰部脊柱管狭窄症の疑いのある患者に対するX線検査は、現在のところ症状を有している患者を判定するには不十分です」と、OsloのUlleval Hospital, Tom Amundsen医学博士らは述べている(Spine,1995;20(10):1178-1186.を参照)。

X線、CT,MRIで無症候性の多くの異常所見が認められる。このことは脊柱管狭窄症の疑いのある患者を評価するには画像診断は、症状のある患者の確認検査としてしか使用できないことを示している。病歴と臨床検査がこの疾患の診断の基本であることに変わりはない。

脊柱管狭窄症は1990年代になって診断が増加した疾患である。これは脊柱管狭窄症が以前より増加したということではなく、単に高性能の画像診断が広く使用されるようになり、多くの患者で狭窄がみつかるようになったからである。

脊柱管狭窄症は非常に多様な解剖学的所見を表わす万能的な用語であるが、臨床上重要とされるのはわずかである。これは一般的には椎孔、外側陥凹、椎間孔の狭窄や絞めつけによる神径根や馬尾の圧迫を指す。研究者の中には、脊髄神経の容積とその周囲組織の大きさが釣り合わないために起こると、より正確に定義する者もいる。脊柱管狭窄症は以前から正中型、外側型、先天性、後天性、さらにこれらを組み合わせた形で分類されてきた。

Ammdsen博士らは、大規模研究の一部として、最近、100例の脊柱管狭窄症患者のX線所見と臨床症状との関連を調べた。この研究は坐骨神経痛がありX線所見で神経根の圧迫が認められた患者を対象とした。神経根の圧迫が椎間板ヘルニア、腫瘍、脊椎感染症から生じた患者は除外した。

患者は16〜77歳(平均年齢59歳)までの男女で、全員があらゆる医学的検査と神経学的検査を受けた。画像検査としては単純X線撮影、脊髄造影、CTを行った。

これらの患者は多様な症状を有していた。脊柱管狭窄症について興味深い特徴を示したが、必ずしも疾患に典型的な症状ではなかった。なぜなら、それらは主要な大学付属病院に来院しなけれぱならないほど、重症で非常に選別された患者にみられる症状であったからである。

95%の男女で坐骨神経痛に加えて腰痛も認められた。91%で間欠肢行、すなわち歩行や他の運動負荷によって誘発される下肢の症状を有した。70%に知覚障害、33%に下肢の筋力低下が認められた。患者の12%は排尿・排便に伴う症状があた。61%で前屈によって疼痛の緩和がみられた。40%では坂を下るときに疼痛がより悪化する報告がなされた。

患者の脊椎のX線所見では広範な変化が認められた。「X線所見は、臨床症状や徴候から推測したものより、広範囲に及んでいました」とAmmdsen博士らは述べている。患者の多くは画像所見で多椎間にわたる異常が認められた。興味深いことに、両側性の臨床症状を訴えた患者はわずか42%であったが、患者の89%で両側性の狭窄性変化を有していたのである。

画像所見に従って患者は別々のサプグループに分けられたが、それらに一致した症状パターンは認められなかった。

様々な基準、例えぱ椎弓根の長さ、椎弓根間距離、脊柱管の前後径、椎間関節の大きさなどによって、神経経路の狭窄を定義しようとした。それらのパラメーターを単独、あるいは組み合わせて検討したところ、疼痛の強度や臨床症状の数との相関は認められなかった。「従来いわれてきた正中型と側方型の狭窄を区別する方法は、本研究では輿味深い臨床的意義は見い出せませんでした」と研究者らは述べている。

TheBackLetter,10(7):76.1995.

加茂整形外科医院