越中おわら風の盆 
 二百十日の初秋の風が吹く頃、富山市八尾町では三日三晩に渡って11の町内が繰り広げる『おわら風の盆』が幕開けしました。
 毎年9月1日から3日にかけて行われるこの『おわら風の盆』は、涼しげな揃いの浴衣に、編笠の間から少し顔を覗かせたその姿は、実に幻想的であり優美なもので誰もがおわらに染まって行きます。




 また、その音色豊かで哀愁漂う胡弓と三味線に合わせたこの『おわら風の盆』は、「女踊り」「男踊り」としてその独特な踊りから、普段の町中で踊る盆踊りとは掛け離れた芸術的な風物詩です。




 ただ、開場には一般車は進入禁止です。20箇所程のどの通りも閉鎖されています。現地までの交通手段として、八尾スポーツアリーナでの駐車場が大きく1000円/台の協力金と無料シャトルバス乗り継ぎを利用します。待ち時間の掛かるところは覚悟が必要です。




 観光客は、数万人と通りを埋め尽くすほどに、かなり圧倒されます。緩やかな坂の町に響くおわら節ののびやかな歌声や踊り手の凛々しい表情も、時として観光客の多さに押されてしまいます。




 ただ、今年の初日は、天候不順の心配から夜7時~10時の町流しが中止となりました。それで、聞名寺に集結した少し年配の方によるキリリとした踊りを堪能しました。




 八尾は、井田川沿いに南北方向の縦に長い町です。おわらを行う区域は縦横総距離にして3キロメートルあり、その中を11の町会が各々干渉せず、独自に移動しているようです。また、二日目からは、天候が回復する予報からも、夕方の7時頃から予定通りに各町内で流し踊りが上演されます。もちろん、お花の上がった家の前では、固定的に一節の踊りが続いています。これも、1カ所に留まらず各町内の踊りも効率良く、隣から隣と踊りを回り見て歩くことが上手な楽しみ方と言えます。




 しかし、あの踊り子の資格として26歳以下と言われる若い独身の女性が、顔を隠してしなやかに町を流す風景は、日本人として毎年この時期にもう一度行ってみたいと思わずにはいられません。




また、この越中八尾の昔懐かしい佇まいも、また日を改めて見学したくなりました。土産店の多いこと、ちょっと豪華でリッチな創りが多いこと。そして、玄関先に置かれた縁台や草花に見られるさりげない心遣い。毎年、たくさんの観光客を受け入れながらも、八尾らしさを受け継がれているしなやかさが、この町にはありました。




      


 
 越中おわら節

2014-09-014