越中おわら風の盆 
 二百十日の初秋の風が吹く頃、富山県八尾市では三日三晩に渡って『越中おわら風の盆』が幕開けしました。
 毎年9月1日から3日にかけて行われるこの『おわら風の盆』は、静かな町に実に幻想的な胡弓の哀愁漂う音色が響く中、誰もがおわらに染まって行きます。
 今年は、主催者の見込みでは、20万人が訪れるそうです。途中、雨に見舞われながらも、今年は週の中日に開催されたことから、観客は例年よりも下回ったようです。




 八尾は、井田川沿いに南北方向の縦に長い町です。おわらを行う区域は縦横総距離にして3キロメートルあり、その中を11の町会が各々干渉せず、独自に移動しているようで、夕方の7時頃から、神社を出発し各町内で上演されています。
しかし、踊り子の資格としては25歳以下と言われる若い独身の女性が、編笠に顔を隠してしなやかに町を流す風情は、観客として毎年この時期に行ってみたいと思わずにはいられません。




 三味線と胡弓(こきゅう)の哀愁漂う音色が響く旋律は、坂の町を涼しげな揃いの浴衣に編笠の間から少し顔を覗かせたその姿は、実に優美で幻想的で手の優しい動きや体のしなりが美しい。
 また、おわら節ののびやかな歌声や踊り手の凛々しい表情も、時として観光客の多さに押されてしまいます。




 八尾町は、江戸時代には飛騨高山と越中を結ぶ交易の町として繁栄し、和紙、蚕種、生糸を特産品として栄えました。この産業により町方文化の発達が「おわら」を花開かせた。曳山展示館を見るに、どの曳山も豪華としか言いようがありません。高岡青銅器や井波彫刻もふんだんに創りこまれています。




 格子戸や土蔵造りの家並みが、蔵の並ぶ古い街の昔懐かしい佇まいも、また日を改めて見学したくなりました。土産店の多いこと、ちょっと豪華でリッチな創りが多いこと。 そして、玄関先にて、にこやかにもカメラ視線に応じてくれた店の人が居て、たくさんの観光客を受け入れながらも、八尾らしさを受け継がれているところがこの町にありました。




 もう一つの「風の盆」聞名寺では、ここだけが許される越中おわら踊りの年配の踊り会場で、全国のおわら節愛好家も参加しておりました。




 会館の前の流し踊り場とは別に高い所にて、特別上演が見られました。一人一人の違った形で固定され、その片足立ちと指先の綺麗さには感激してしまいました。この一風変わった形としてのおわらの踊りは、企画性豊かにて見応えがありました。




 一晩中、胡弓と三味線の哀愁漂う音色が響く旋律は、日本でも「越中おわら節」だけの幻想的であり優美な節回しは、いつまでも頭の中にこびり付いてしまいました。




 この『おわら風の盆』には毎年出掛けますが、来年もまた参加したいと思いました。


        


 
 越中おわら節

2015-09-02