硬膜外ステロイド注射の有効性はまだ証明されていない


オランダの最新の研究によれば、「硬膜外ステロイド注射の効果は、あるとしても短期間しか持続しない」という。Bart Koes博士らは、硬膜外ステロイド注射に関する全ての無作為抽出試験を再検討し、広く用いられている方法論的評価法を用いて評価した。その結果、硬膜外ステロイド注射が有効であるとする決定的な科学的証拠はほとんどみつからなかった(Pain,1995;63:279-288.を参照)。

彼らは、「これらの臨床試験の研究法スコア(100点満点)は17〜72点の範囲にありました」と明らかにした。50点以上のスコアがつけられた試験は8件であった。総括すると、これらの無作為抽出試験のうちの半数は、硬膜外ステロイド注射後に効果ありという結果であったが、残りの半数は否定的な結果に終わった。大部分の試験は計画上に本質的な欠陥がみられた。試験の質と試験結果との間に相関はないように思われた。

Koes博士らは、「硬膜外ステロイドの有効性はいまだ証明されていません」と結論している。「現時点では坐骨神経痛を伴わない腰痛患者に硬膜外ステロイド注射が有効である、という見通しは立っていません」。

坐骨神経痛や神経根性疼痛を硬膜外ステロイド注射で処置することに対し、矛盾する結果がでていることが明らかになった。方法論的スコアが60点以上であった最も優れた4つの研究のうち2つで、亜急性および優性の腰痛と坐骨神経痛を有する患者に対して有効であるという結果が得られた。これに反して残りの2研究では、椎間板ヘルニアから二次的に生じた腰椎神経根症の患者に対して硬膜外ステロイド注射は全く効果がなかった。硬膜外ステロイド注射は根性痛治療に有効か?その答えはどの研究をもとに論じるかによって異なる。

硬膜外ステロイド注射の支持者(脊椎専門医のかなりを占める)へのメッセージは明白である。彼らは、硬膜外ステロイド注射の有効性を証明するためにより良い研究を計画し、速やかに開始するべきである。医療保険システムの中には、すでにこの治療法の適応を制限し始めている機関もみられ、第三者費用支払人がこの種の研究を参照するのに伴い、この傾向が強まるだろう。

これは著名な疫学者グループが行った腰部疾患の治療に関する7回目の方法論的評価である。興味深いのは、硬膜外ステロイド注射に関する試験が、今のところ他のいかなる治療法よりも高いスコア〔中央値52点(範囲17〜72)〕を得ていることである。整形術に関する臨床試験のスコアは53点(35〜61)、運動療法は40点(24〜61)、脊椎マニピュレーションやモビリゼーションは35点(20〜56)、腰痛教室は36点(16〜70)、牽引治療は36点(23〜66)、臥床安静は33点(23〜82)であった。

治療方法の有用性を数字で議論することは奇異に思えるかもしれないが、この種の試験は保険会杜、HMO(総医療管理型保険機構)、政府およびその他の費用支払人が、これらの治療費用を負担するかどうかの決定に役立つ。個々の医療従事者が、自分の腰痛患者に行う治療に関して完全な支配権を握っていた時代は急速に遠ざかりつつある。将来の腰痛治療は少なくとも部分的にはこの種の研究に基づいて決定されるようになるだろう。

The Backletter,11(3):26.1996.

加茂整形外科医院