論文へのコメント
Gene Feder, MD
St Bartholomew's and the Londau Hospital Medical School
Queen Mary and Westfield College
London, UK
合併症のない腰痛患者へのX線撮影検査は避けるべきであるとする臨床ガイドラインの勧告は,主として予測検出力の乏しい観察研究の結果に基づいている。患者には腰椎X線撮影が有用な検査であるという認識があり,また医師にも患者を満足させたい,あるいは確認を行いたいという社会的理由があることから,X線撮影が続けられている。Kendrickらの研究は,この検査が腰痛の管理において有用ではなく,短期間でみると実は疼痛が増強し,健康状態が不良になるというエビデンスを強化するものである。その一方で,X線撮影検査を受けた患者の方が9ヵ月時点での医療に対する満足度は高く,両群の患者とも検査を希望すると答えた。すべての適格患者のうちどのくらいの割合が試験に組み入れられたかは不明だが,試験に参加した家庭医の数が多いことから,少なくとも英国においては,結果を一般化することは可能であると考えられる。一般的なことではないが,参加者は各家庭において募られた(訳注,リサーチナースによる訪間基礎調査による)。しかしこうした研究上の特徴が,アウトカムに大きな影響を及ぼす傾向はないようだ。研究者は,腰痛が6週間以内に改善する大部分の患者を除外することにより,最良の検査および治療戦略に関してまだ不明な点が残る患者群に焦点を当てた。われわれは,X線撮影検査に頼ることなく,腰痛患者の満足度を向上させる方法を見付けださなければならない。通常は技術的な精査や医学的な介入を必要としない問題としての腰痛に関して,われわれは分かっていることをより幅広く伝えていく必要がある。
文献
1 van Tulder MW, Assendelft WJ, Koes BW, et al. Spinal radiographic findings and nonspecific low back pain. A systematic review of observational studies. Spine 1997;22:427-34.
2 Little P, Cantrell T, Roberts L, et al. Why do GPs perform investigations? The medical and social agendas in arranging back X-rays.
Fam Pract 1998;15:264-5.
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