【目的】
近年,神経根の慢性圧迫によって惹起される痛みにtumor
necrosis factor-alpha(以下TNFーα)が関与していることが示唆されている。しかし,神経根の慢性圧迫によりTNFーαが産生されるか否か,産生されたTNFーαが痛みに関係するか否かは明らかにされていない。本研究ではラット神経根慢性圧迫モデルに対し,抗TNFーα抗体を投与して,機械的刺激閾値の変化を検討した。
【方法】
SD系雄ラット(n=18)を対象とした。全身麻酔後,左第5腰椎椎弓の一部を開窓し,神経根と後根神経節(DRG)を同定した。開窓部から椎間孔にむけてstainless
steel rodを挿入し,神経根とDRGを圧迫した。これらを以下の2群に分けた。1群は術後6日目にPBSに溶解したラット抗TNFーα抗体10mg/kgを静注し,抗体投与群(n=6)とした。他の1群は,術後6日目にPBSを静注しcontrol群(n=6)とした。椎弓の開窓操作のみを行いsham群とした(n=6)。これらの群に対し,術後1,3,5,7,10,14,21,28日目にvon
Frey針を用いて左足底の50%閾値を計測した.統計学的解析はANOVAを用いて行い,P<0.01で有意差ありとした。術後28日の時点で,3群のDRGを摘出しTNFーαの免疫染色を行った。
【結果】
抗体投与群とcontrol群では,術後3〜28日でsham群と比べ有意に機械的刺激閾値が低下していた。一方,抗体投与群では薬剤静注翌日の術後7日目において,control群に比べ有意な閾値の上昇が認められた(p<0.01)。しかし,他の計測時点では2群間に有意差は認められなかった。免疫染色では,sham群では染色を認めなかったが,抗体投与群とcontrol群では神経細胞,シュワン細胞,血管内皮細胞の染色が認められた。
【考察】
抗TNFーα抗体投与により,機械的刺激閾値の上昇が認められた。また,神経根の圧迫によりDRG内にTNFーαが認められた。以上の事実から,神経根の慢性圧迫により惹起される痛みにはTNFーαが関与していると考えられた。
【結論】
神経根の圧迫による疼痛には,TNFーαが関与している。
(加茂)
機械的刺激以外、内因性発痛物質による痛みはどうなのか?
いずれにしても末梢からの痛み刺激が存在しないことには痛みは生じないわけだ。だから「以上の事実から,神経根の慢性圧
迫により惹起される痛みにはTNFーαが関与していると考
えられた。」この表現は疑問。
全く症状のないものもいるがそれはどういう理由か。