テニス肘やジャンパー膝、あるいはアキレス腱炎などに代表される腱炎および腱付着部炎は、日常診療で非常によく遭遇するスポーツ障害であるが、その病態はいまだに解明されていない部分が多く、治療法も確立されていないのが現状である。特に、スポーツ活動を中止し安静にすれば症状は軽快するが、再開するとまたすぐに再発する場合が多く、この再発をいかに防止するかがこの疾患の治療法を考える上で最も重要な点であるといえる。
そこで、今回は膝蓋腱炎についてその病態を慢性期と急性期の2つに分け、さらに急性期から慢性期に進行する要因とその予防法について実験的考察を加えて報告する。
1.慢性期の膝蓋腱炎の病態について
2.急性期の膝蓋腱炎の病態について
3.急性期から慢性期に進行する要因について
4.腱炎の再発予防について
ついで、今度は再刺激の強度を初回の半分である6kgfで行ったところ、2週と6週の再刺激はいずれも初回刺激後の修復を妨げなかった。この実験は再損傷を起こさない程度の負荷であれば修復早期であっても、その修復を妨げないことを示している。言い換えれば、なんらかの運動が修復を促進させることができる可能性があるということである。
図4の装置を用いて、幼弱なラットに下り坂走すなわち大腿四頭筋の遠心性運動を速度15m/分、傾斜15°、30分/日×5週、で行わせると、図7に示すように大径の膠原原線維の隙間に小径の線維が増生し線維密度を増加させることが分かった。遠心性運動は近年、慢性腱炎の保存的治療に用いられ、その有効性が報告されているが、その機序については解明されていない。この実験結果は遠心性運動が小径の膠原原線維を増加きせることにより腱の修復を促進し、腱炎の再発予防に有効な治療法になりうる可能性を示している(図8)。

(加茂)
Excessive Loading:過度の負荷
Acute Condition of Tendinosis:腱炎の急性期
Eccentric Exercise:遠心性運動:
ゴルフのスウィングで頭をのこしてフォロースウィングする運動。ゴルフスイングもインパクトの瞬間までに最高速に達したスイングスピードを、フォロースイング時の遠心性収縮で減速しなければならないということになります。